富山高専の国際ビジネス学科を卒業後、現在は神戸大学に在学中の巾 優希(はば ゆうき)さん。高専時代は韓国語に熱中し、街中で出会った韓国人とその場で意気投合することもあったそうです。そんな巾さんに、高専時代の思い出や研究のお話、今後の展望を伺いました。
「好き」を究めたおかげで、韓国に友人ができた
―富山高専に進学されたきっかけを教えてください。
中学校で所属していたバスケットボール部の先輩が富山高専の国際ビジネス学科に進学されたと聞き、そこで高専の存在を知った私の母が「富山高専に進学したら韓国語を勉強できるらしいよ」と教えてくれたんです。私は当時韓国アイドルにハマっていたので、すぐに興味を持ちました。
富山高専の国際ビジネス学科は、語学について第二外国語も学べるところ、留学制度が整っているところに魅力を感じました。地元から離れ、新しい環境で生活したいという気持ちもあったので、進学を決めました。
―富山高専に進学されてみて、いかがでしたか。
やっぱり韓国語の授業がすごく印象に残っています。同じ韓国語のクラスの同級生たちがすごく頑張っている様子を見て、自分も頑張らなきゃと思えましたね。少人数のクラスだったので、先生もひとりひとりに寄り添ってくれて、楽しく学ぶことができました。早いうちから韓国語能力検定を受けて、4級を取得できたことも自信につながりました。
私が在籍していた頃は、新型コロナウイルスの流行で留学制度が休止されていたんです。ですが、5年生のある日、東京で友達とご飯を食べながら韓国について話していたら、隣にたまたま座っていた日韓カップルの方が声を掛けてくださり、私たちが「3月に卒業旅行で韓国に行く」と話をしたら、「ぜひ現地で会いましょう」と言っていただき、韓国を案内してもらいました。
そのうえ、その旅行で泊まったホテルのフロントの方とも仲良くなることができたんです。「こんなに韓国語が上手な日本人は初めて」とまで言っていただけて、ちょうどその方が4月末に大阪に旅行に行くとのことだったので、当日は私が大阪に行って観光案内をしました。留学にこそ行けませんでしたが、それに勝るとも劣らない、素敵な経験ができたと思います。
-学業以外の思い出について教えてください。
部活では女子バスケットボール部に所属していました。4年生のときに全国高専大会で準優勝したことが思い出です。2年生のときまでは選手だったんですが、勉学との両立を考えて、3年生を機にマネージャーに転身させてもらいました。
マネージャーになってからは、普段の練習のタイマーや声出し、選手の体調管理などのサポートをしていました。ほかにも、試合の記録のために顧問の先生にお願いしてタブレットを導入してもらい、そこで取ったデータを基にミーティングをして、戦略を立てることもしていました。
全国高専大会に行ったときには、「優希さんがいてくれてよかった」「頼りになる」と言ってもらえたことがうれしかったですね。
ほかには、4年生のときに行った寮での夏の花火大会も思い出に残っています。コロナ禍が終わり、3年ぶりに再開できたお祭りでした。寮の企画委員に入っていたので、感染症対策を十分考慮した上で、「学年の枠を超えて楽しむ」企画を考え、みんなで浴衣を着たり、手持ち花火をしたり、レクリエーションをしたり、寮の活気が戻ったのを感じられました。
信頼とモチベーションの関係性を解明
-卒業研究は、経営学の宮重先生のゼミに入られたそうですね。
宮重先生の経営学の授業がおもしろかったことをきっかけに、宮重ゼミを選びました。私は自分の考えを話していると、だんだん自分が言っていることが分からなくなるタイプだったので、論理性を重視する宮重先生のもとで、理路整然とした思考力を身につけたいと思ったことが理由です。
ゼミの活動では、企業訪問や卒業生の方々との交流を通して、「仕事を楽しんでいる人たちがこんなにもいるんだ」という、自分が今まで触れてこなかった価値観に触れることができました。また、そういった心地よい環境をつくるために、組織全体で個性や自発性を大事にしていることも印象深かったです。
卒業研究は、就職後は人事に携わりたいと思っていたこともあり、当初は採用にまつわる研究をする予定でしたが、情報収集の難易度が高いことに気付き、次に興味があった「働くモチベーション」についての研究に切り替えました。ただ、そこでも研究として成り立ちそうなクエスチョンを出せなくて、すごく悩んでいたんです。
そんな中、たまたま母が「今年から上司が変わって、信頼できる人だから、仕事が楽しい」と話していたのを聞いたことで、「信頼できる上司の存在と、部下の仕事のモチベーションの関係」というテーマをひらめき、卒業研究のテーマに決めました。
-その研究について、詳しく教えてください。
もう少し詳しく言うと、「信頼できる上司の存在と部下のワーク・モチベーション向上の因果関係」についての研究です。これを明らかにするうえで、まずは一口に「信頼」といっても様々な解釈があるので、先行研究を基に「信頼は先行要因となる3つの要素で構成されている」という定義付けを行いました。
具体的には、「能力」「誠実性」「慈善性」です。つまり、上司が「スキルや能力を持っているか」「部下が許容できる範囲の原則を持っているか」「部下を気にかけているか」の3つの要素の確立が信頼につながります。
また、同時に部下のワーク・モチベーションも「達成感」「公平感」「連帯感」という3つの要素で構成されると定義し、「信頼の3要素を充足するようなリーダーシップを上司が発揮することによって、部下の様々なモチベーション向上につながる」という仮説を立てました。検証方法は、実際の従業員へのインタビューによるものです。これによって、信頼できる上司の存在と部下のワーク・モチベーション向上の因果関係を明らかにしました。
「語学×専門分野」で強みを育てる
―大学進学を決めた理由を教えてください。
一番は、経営学についてもっと深く学びたいと考えたからです。4年生の夏頃から進学を考え始めました。中でも特に「人と組織の関係」についてもっと専門的に学びたいと考えたことや、卒業研究のときに断念した採用関連の研究を専門とされている先生がいらっしゃるという理由から、神戸大学への進学を決めました。
大学に編入してよかったのは、自分を見つめなおすことができたことです。今までは「高専出身です」と言うと「頭がいいね」と周りが言ってくれるので、それを信じていたところもあったのですが、神戸大学は在学生はもちろん編入生のレベルも高いので、「まだまだ頑張らなきゃ」と思えました。
今後の研究では、採用活動にマーケティング的な視点からアプローチできればと考えています。今はケースメソッドという教授法を用いて、企業が抱える問題点の洗い出しや最適な解決策を導きだすことを目指しています。また、分析手法となるマーケティング論も同時に学んでいます。
―今後の目標を教えてください。
大学生活は残りの2年間を最大限に楽しむのが目標です。大学生だからこそできることを体験したいので、イベント企画サークルや手話サークルに入って、充実した毎日を送っています。
就職後はやはり採用活動に関わっていきたいです。学生の考えではありますが、学生が自分にしっかり合った企業を選べるようなサポートができたらいいなと考えています。
最近、就活を始めましたが、友達のモチベーションが「早期内定をもらいたい」になっているのをすごく感じるんです。今後長く働いていく企業を決める重要な活動ですし、必要以上に焦らず、楽しんで就活できたらいいと考えているので、私が今後、企業で採用に関わることができたら、そういった学生の意識を変えられるようなイベントを開催したいです。
現在、インターン先の企業で実際に採用戦略の立案を経験させていただいているので、そこで学びを深めつつ、自分でも具体的な意見が出せるように日々勉強しています。
―現役の高専生にメッセージをお願いします。
まず、富山高専という環境で語学に打ち込めたことは私の財産になっています。アルバイト先で海外のお客様が来られた時にも役立っていますし、実生活にも生かせるスキルを身につけられたと思います。
ただ、語学というスキルだけで生きていけるのは一握りです。ですから「語学もできるし、世界に発信できるような知識もある」ことが重要だと思います。自分が得意とする専門分野があって、それをどう伝えるかという手段として外国語が使えると、大きな強みとなります。
高専では5年間同じメンバーで過ごすことになるので、大学編入によって視野を広げてみることはおすすめです。ぜひ在学中にいろいろな経験を積んで、挑戦して、自分の能力を伸ばしていってほしいです。
巾 優希氏
Yūki Haba
- 神戸大学 経営学部 3年
2024年3月 富山高等専門学校 国際ビジネス学科 卒業
2024年4月 神戸大学 経営学部 入学
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