株式会社メジャーシステムの代表取締役社長である小松裕介さん。高専出身ということもあり、高専生の新卒採用にも力を入れています。事業内容である「特別高圧の受変電設備のトータルサポート」や、高専生の強み、中小企業としての採用活動などについて伺いました。
受変電設備の届出から運用までの「トータルサポート」が強み
―メジャーシステムの事業内容について教えてください。
当社では「高圧・特別高圧の受変電設備のトータルサポート」を行っています。まず、「受変電設備」というのは、発電所から送られてくる高電圧の電気を「使いやすい(電圧を低くした)電気」に変えるものです。
家庭にも低圧の受変電設備はあるのですが、大型のビルや施設、工場などでは大規模な電力が使用されるので、「高圧・特別高圧の受変電設備」が必要になるのです。
受変電設備を導入するとなった場合、まず計画を立て、工事を行い、法的な試験を受ける流れになります。また、毎年1回必ず点検もしないといけません。そのすべての工程に当社は携わり、コンサルティングの立場で携わることもあります。高圧・特別高圧の受変電設備にまつわることで、様々なご相談からお客様が安心して使用できるまでを対応させていただいております。
―「特別高圧の受変電設備のトータルサポート」は、ほかでは真似できないことなのでしょうか。
当社はメンテナンス事業(年1回の点検)が主軸でしたので、運用後も見据えた工事・メンテナンスを行うことが他社にない特徴かと思います。また、限られたメーカーだけでなく、幅広くメーカー工事もサポートできますので、工事計画段階から運用後までトータルでサポートが可能です。
加えて、主に特別高圧の分野になると、完成後、経済産業省による安全管理審査の立会いがあります。この審査は、工事を請負う大手の工事会社様でも、審査に通るために多くのノウハウと高いスキルを必要とするとても難しいものです。しかし、当社は審査に通るため、他社より数多く受審している実績があり、お客様と一緒に、工事前から設備をより安全に使用するための伴走をさせていただいております。
施設のオーナー様や、管理されている電気主任技術者様と最初の段階で特別電圧の受変電設備をどのように設置していくのか検討し、伴走しながら進めることができるのは、全国的に見ても珍しい特徴であり強みだと思います。
技術屋だからこそ重要な「謙虚な姿勢」
―現在、メジャーシステムには何名の高専出身者がいらっしゃるのでしょうか。
32名の従業員の内、6名が高専出身者で、私を含めた役員が2名、現場従事者で4名となります。また、23卒の新卒高専内定者が2名います。
そもそも新卒採用は、私が代表取締役社長に就任した8年前から始め、その2~3年後に高専生の新卒採用にも踏み出しました。理由としては、私自身が高専出身なのもあって、「高専生の強み」を感じていたからです。
強みの1つには、「専門性の高さ」が挙げられます。私は育英高専(育英工業高等専門学校 現:サレジオ高専)の電気工学科に所属していましたが、5年間電気のことばかり考えることができました。これは大学生でもなかなか経験できない環境ですね。
もう1つは「謙虚に学ぶ姿勢」です。これは技術系分野において非常に重要なことだと思います。冷静に物事を建設的に考えつつ、純粋に勉強しますので、成長スピードも速いです。
―実際、高専出身者に対する周りの反応はいかがでしょうか。
技術を習得するのも速いし、優しく後輩を指導していますね。もう少し元気な方がいいかもしれませんが(笑)、これは私と変わらないかもしれません。私自身も、20代は別の会社に勤めていましたが、寡黙に仕事をしていましたから。
ただ、育英高専では70~80人ほどいた吹奏楽部の部長をしていたので、そこで学んだリーダーシップの基礎が、現在の代表取締役社長としての仕事に生かされていると思います。当時の吹奏楽部の方が当社より人数が多いですね(笑)
―新入社員への教育プログラムもあると伺いました。
はい、「Mトレ(メジャーシステムトレーニング)」という教育制度です。通常5~10年間かけて技術を身に付けるのを3年間で目指すもので、業務の基礎や電気の知識などを学びます。OJTだと先輩によって評価が異なり、バラツキが生じるため、教育制度を設けました。
Mトレでは、当社の業務を細分化し、どの作業ができるようになったのかを「見える化」することで評価しています。これによって各々の弱点が分かり、寄り道をせず一直線に成長することができるのです。現在も、より定量的な評価ができるよう開発を進めているところでして、私自身も現場のみなさんにヒアリングするなど、全社的に取り組んでいます。
―働き方改革も行っていらっしゃいます。
建設業やインフラ業などの業界は昔から「3K(きつい、汚い、危険)」のようなイメージが先行します。当社は新卒採用を始めたときに、業界イメージを改めようと考えました。まだ「働き方改革」という言葉が世間に浸透していないころだったと思います。
全社的に取り組むために、年度ごとの目標に残業の削減も取り入れております。各プロジェクトでの作業の見直しや、個人個人で意識的に変えてもらっているところなど、多岐にわたり全員で取り組んでいます。
また、IT化にも力を入れており、例えば、タブレットを配布することで、事務所に戻らないとできない仕事を、現場での待ち時間や移動時間に行えるようにしました。そのほか、ペーパーレス化やクラウド化など、ITを導入することで業務を効率化しており、現在も開発中の取り組みがあります。
このような改革を行うことで、残業時間にも目に見える効果が出ています。時期によっては半分以上ほど減っている場合もありますね。
―先代のお父様から引き継いだ後、様々な取り組みを始めていますが、逆に「変えないようにしていること」は何でしょうか。
「とにかく謙虚であること」です。私たち技術を扱う者は、技術を覚えると、そこに慢心してしまう傾向があります。「こんなことも知らないのですか?」といった態度をとることなどが、その例ですね。「困っている方から仕事をいただいている」ということを、ちゃんと理解しないといけません。
先代は誰よりも電気のことを学び、技術として自慢することなく、技術で人の輪をつくっていました。だからこそ、当社を設立した後も、お引き合いの機会をいただき、現在まで経営できているのです。「お客様に合わせて伴走するために、お客様と同じ目線に立つ」という「謙虚さ」が、当社の根底にあるイズムだと思います。
コロナ禍での採用活動 ―視点を合わせる重要性―
―コロナ禍の採用活動では、苦労された部分もあるのではないでしょうか。
新卒採用で培った採用パターンが出来上がりつつあったところでしたので、正直悲惨でした。中小企業は認知度が低いので、リアルイベントだと集客できるのですが、オンラインになると集客が全くできません。
そこで、原点回帰じゃないですけど、今年は積極的に学校訪問を行い、先生方と極力対面でお会いして、採用につながるよう努めました。SNSの導入も考えましたが、振り返ってみると「採用につながったのは、学校訪問したところ」でした。23卒の新卒高専内定者2名もそうです。まだ今年の採用活動は続いていますが、現状うまくいっているかなと思います。
コロナ禍でのオンラインの採用活動を通して、「中小企業はどうしていくべきか」は考えざるを得なかったですね。ただ、学生と関わってみると、学生サイドも企業や友達との交流不足によって情報が足らず、どのように就職活動に挑めばよいかわからなかったようです。
「リアルな場での情報交換が不十分な学生」とどのように接点を持つかというのは、私たちの採用活動のテーマの1つでした。当社に来ていただいたインターン生や、面談に来ていただいた学生にも、「今後のキャリアをどう考えているか」を尋ね、「だったらこんな業界や、こんな企業もあるよ」という、当社に限らないアドバイスもしていましたね。
「学生・学校サイド」「企業サイド」「就職を支援するサイド」が視点を合わせて活動しないと、誰も得をしないと思います。少子化がどんどん加速している中、お互いの機会損失を防ぐことこそが、コロナ世代の採用活動には重要だと思います。
―メジャーシステムは「さいたま市岩槻区真福寺」にございます。その環境について教えてください。
東北自動車道の岩槻ICもありますし、静かなところで、機材を保管しておくための土地もありますので、事業的に不安なところはありません。しかし、駅やバス停からは遠いので、採用活動ではハンデがあると正直思います。
ですが、最近は考えが変わってきました。岩槻という土地はさいたま市中心部の大きな都市とは違い、静かな土地です。だからこそ、そういった土地で事業を成功させ、雇用を生み、人を流入させることが強みになると思うのです。
今年4月に入社した新潟出身の採用者からは、「生まれ住んだところと環境が似ているので安心します」という声を貰っています。必ずしも皆、都心を選択するとは限りません。改めて、自分たちの土地を振り返ることは、自分たちの事業や採用活動を振り返ることでもあると思いますね。
―最後に、現役の高専生にメッセージをお願いします。
高専生は気づいていないかもしれませんが、「高専生は本人が思っている以上に専門性を持っている」ということを伝えたいです。
今後のキャリアを考えるうえで就職活動はいい機会だと思います。「OBOGが就職しているから」「ネームバリューがあるから」ではなく、高専での勉強や研究、部活動、アルバイトなどで社会経験や知見を高めたうえで、自分の可能性に合った企業に就職してほしいですね。学生時代はいろいろ楽しんで、苦しんで、青春を謳歌してください!
株式会社メジャーシステム
〒339-0044 埼玉県さいたま市岩槻区真福寺296-2
TEL:048-798-7144
https://www.measure-system.co.jp/
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