インタビュー

自立型再生可能エネルギーの構築とともに、国際的な視点で「グローバル人財」に必要な力を磨く

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「海上および陸上自立型再生可能エネルギーシステム」の社会実装を目指す、大島商船高等専門学校の朴 鍾徳(パク・チョンドク)先生。韓国で海軍の経験もある朴先生が、なぜ日本で教鞭を執ることになったのか、日本の高専生に何を伝えたいのか、その思いを伺いました。

海に導かれて歩んだ人生

―朴先生のふるさとである、韓国でのことを教えてください。

熱心に本を読む、幼少期の朴先生
小学生時代

韓国の南にある慶尚南道(キョンサンナムド)という地域の、山に囲まれた場所で生まれ育ちました。子どもの頃から海に憧れを抱いていたこともあり、大学は釜山の韓国海洋大学へ進学しました。海洋大学では商船高専と近いカリキュラムを学びましたね。そこで海技士になるための国家資格を目指して勉強しました。

大学3年の時に、遠洋航海の実習でアジアを2カ月ほどめぐったのですが、その時に初めて訪れた海外が、日本の鳥取県でした。その時のことは、とても印象に残っています。

卒業後は海軍の将校になり、海中で生き残るための戦闘水泳法や戦闘艦艇の戦術などを学びました。訓練は大変でしたが、たくさんの兵士や士官との友情を育むことができたのは、とてもいい思い出です。

海を背景に、ヘリが飛ぶのと一緒に。
海軍将校時代

―大学での学びを生かして兵役を終えられて、それから日本に来ることに?

兵役後は母校の大学院に進学しました。その時に指導教員の方たちが持っていた専門書のほとんどが日本語のものだったんです。それを見て勉強のためにも日本語は必要だと思い、日本語の塾に通いました。

日本への関心が深まっていった頃、神戸大学海事科学部(当時の神戸商船大学)に、1年間の短期留学の募集があることを知り、思い切って応募したんです。この留学が私の人生の転換期になりましたね。

大学院卒業後、韓国の企業に就職をしたのですが、日本での短期留学での経験が忘れられなかったことと、もっと勉強がしたいという思いが強くなり、4年後に神戸大学大学院への留学を決心しました。

―日本に引き寄せられたんですね。朴先生はどこで高専とつながったのですか。

大きなスクリーンにプロジェクターでスライドを投影し、登壇して話す先生の姿
国際会議で発表

大学院博士後期課程での最後の国際会議で、大島商船高専の先生に出会いました。そこで初めて日本の高専について知り、日本の船員教育制度に興味が湧いたんです。卒業後は韓国に帰ることも考えていたのですが、「大島商船高専で働いてみませんか」と声をかけてもらって。大島商船高専なら海技士の資格や企業での社会経験も生かせて、将来的には日韓両国の教育現場に役立てるのではないかと思いました。

大島商船高専の商船学科の助手として採用していただき、主に機械工学に関する授業や補助機械工学・冷凍空調工学・熱流体力学および関連の実験や演習科目、卒業研究などを担当しています。

高専4校で「自立型再生可能エネルギーシステム」を展開

―朴先生が今取り組まれている研究について、教えてください。

文字と図で、研究について記したスライド
「分散型エネルギーシステム」研究の背景

現在取り組んでいるのは、「海上および陸上自立型再生可能エネルギーシステムの構築」と、「エネルギーマネジメントシステムの試作」です。

近年、大気汚染による環境問題でクリーンエネルギーの活用が社会的に求められていますよね。コスト的にはもちろん、環境に配慮した再生可能エネルギーが注目を集めていますが、私たちのシステムのポイントは商用交流電源と接続しない「自立型」の電力供給システムという点です。

仕組みを簡単にいうと、日中は太陽光パネルで発電し、余った電力で水素発生装置を動かして水素を貯蔵します。そして夜間は貯蔵した水素を使ったり燃料電池にしたりできる「分散型エネルギーシステム」としてハイブリット形式を採用しました。

―その研究がスタートしたのには、何かきっかけがあったのでしょうか。

文字と図で、研究について記したスライド
実験用「再生可能エネルギーマネジメントシステム」の構成①

2018年に「第4ブロック高専教員間マッチングイベント」に応募して、そこで研究分野が合致した、弓削商船高専・呉工業高専・松江工業高専がタッグを組むことになり、この研究チームが結成しました。

私はそのグループの代表を務めています。現在の自立型再生可能エネルギーシステムに各高専の独自の技術を集結させて、システムに発展させていけるように研究を進めている段階です。

文字と図と写真で、研究について記したスライド
実験用「再生可能エネルギーマネジメントシステム」の構成②

このシステムにより安定的な自然エネルギーの供給がかなうようになれば、将来的には学生へのエネルギー連携システムの教育効果はもちろん、自立型再生可能エネルギーシステムとして、地域・産業、自然災害時の現場など、社会のさまざまな場面で重要な役割を果たせると考えています。

コミュニケーション能力を磨き、世界で活躍できる人に

―大島商船高専に着任後も、海外での研究実績を残されているとお聞きしました。

海外生活時代の先生の姿
在外研究 in Ottawa, Canada (2011)[左]、留学 in New York, US (2015)[右]

2011年にカナダのカルトン大学の機械宇宙工学科の研究室で、海洋・船舶への応用と高性能化を図るために在外研究をしました。また2015年にはアメリカのニューヨーク市立大学のクイーンズカレッジ (QC)でのグローバル教育育成プロジェクトに参加しました。

QCでは、現地の教員の教授法や学生たちのマネジメントなどを学ぶことができましたが、英語での受講でしたので、専門用語の知識不足を痛感したんです。滞在中は言語パートナーを探してネイティブスピーカーに英語を習い、私は韓国語や日本語を教えました。言語や文化を探索するいい機会でしたね。

―今後の高専教育の中で、どんなことを大切にしていきたいとお考えでしょうか。

教室で、先生と対面して授業を受ける6名程の生徒たち
本校における公開講座(ハングル語学堂)の様子

韓国国籍という自分の立場を生かして、学生にいろんな情報を伝えていけたらと考えています。その一つとして、「グローバルコミュニケーション」の大切さを伝えていきたいです。

私が海外で経験した言葉の壁は、学生がこれからどんな世界に進んでも、いつかぶつかると思います。例えば海技士になったら英語による会話は必須です。つまり、英語が話せなければ仕事ができないほど、言葉は大切なツールなんです。言葉だけでなく文化の理解を深める必要もあります。

また言語と同様にコミュニケーション能力を磨くことも重要です。言葉と併せてお互いを理解し合う手段をうまく使って、誰とでもコミュニケーションが図れるようになれば、国内外どこに行っても活躍できる人になれると思います。

画面のスクリーンショット
英語によるオンライン韓国語講座の様子[左]とグループチャットの例[右]

私もそのきっかけとなれるように、オンラインで無料の韓国語講座や、高専の公開講座で韓国語や英語の講座を実施していますので、ぜひたくさんの方たちと大島商船高専で一緒にコミュニケーションを取り、役立てる場になればと考えています。

そしてこれからも国際交流や国際教育、グローバル工学教育といった視点での学びも深めながら、高専生が「グローバル人財」に求められる要素をたくさん身に付けていけるよう、一緒に学んでいきたいと思います。

よく晴れた空の下、海上でしぶきをあげて水上バイクを颯爽と運転する朴先生
趣味を満喫

朴 鍾徳
Park Jongdoc

  • 大島商船高等専門学校 商船学科 教授

朴 鍾徳氏の写真

1995年 韓国海洋大学校 海事大学 機関工学科卒業
2000年 韓国海洋大学校大学院 機関工学科 熱流体工学専攻 修士課程修了
2006年 神戸大学大学院自然科学研究科海洋機械エネルギー工学専攻 博士課程修了
1995~1997年 海軍作成司令部 大韓民国海軍戦闘艦 海軍将校
1999~2003年 JEMACO Flair(株)R&D部(韓国釜山)勤務
2006年 大島商船高等専門学校 商船学科 助手として着任
2020年 同教授 現在に至る

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