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見る者が予想だにしなかった戦略で高専ロボコン2025優勝! 旭川高専「天旋」が、誰もが安心して見ていられる旋回に至るまで

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2025年11月16日(日)に東京・両国国技館にて高専ロボコン2025の全国大会が開催され、旭川高専「天旋」が優勝しました。旭川高専の優勝は2003年以来、22年ぶりとなります。

今回の競技課題は「Great High Gate」で、主に「ロボットでボックスを組み立てて、高いゲートをつくること」が得点につながる競技でした。しかし、旭川高専「天旋」は低めのゲートをいち早くつくり、そこを旋回して数多く通過することで「通過得点」を重ねるという、他高専では見受けられない戦略で次々と勝ち上がり、見事優勝に至りました。

優勝するためには、小回りが利き、精度よくスムーズに旋回するロボットをつくる必要があるため、高いゲートをつくること同等に高いレベルが求められます。そのロボット開発についてや、印象に残っている試合、優勝が決まった瞬間などについて、リーダー・操縦者の杉森一郎さん、制御・回路担当の安達匠さん、搭乗者の橋本朔之進さん(ともにシステム制御情報工学科5年)、主設計者の両國文裕さん(電気情報工学科5年)にお話を伺いました。

旋回のアイデアが生まれたタイミング

―みなさんが旭川高専の「ロボット・ラボラトリ」に入部した経緯を教えてください。

杉森:実はそこまで確固たる意志があったわけではなく、「高専で過ごすなら、やっぱりロボコンはやらなきゃいけないよな」といった、軽い気持ちで入部しました。

リーダー・操縦者の杉森さん
▲リーダー・操縦者の杉森さん

橋本:自分も杉森くんとだいたい同じです。入試の面接でも「ロボコンしますか?」と聞かれるなど、やはり高専といえばロボコンだと思っていました。ただ、自分は1年生のときのロボコン全国大会が終わるまでは入部しておらず、その大会で「みんな頑張っているんだな」と思い、入部しました。

搭乗者の橋本さん
▲搭乗者の橋本さん

両國:2012年に玉入れが競技課題だった高専ロボコンを見たことがきっかけで、ずっとロボコンが好きでした。自分もこのままロボコンをするんだろうなと思いながら高専に入学し、ロボット・ラボラトリに入部しました。

主設計者の両國さん
▲主設計者の両國さん

安達:エンジニアになりたいというふわっとした意思で旭川高専に入学し、ロボットをつくってみたいというふわっとした意思で入部しました。途中で辞めようと思ったこともあったのですが、5年間続けてこられました。

制御・回路担当の安達さん
▲制御・回路担当の安達さん

―途中で辞めようと思ったこともあったんですね。

安達:キリのいいところで終わりたいという思いが当初からあり、全国大会の直前には毎年口癖のように「今年で辞めるか~」と言っていたんです。ただ、2,3年生のときは旭川高専として良い結果が出なくて後味が悪く、4年生のときは全国大会でベスト4に入り、「ここまで来たら優勝するしかない」という思いが生まれたので、辞めることはできませんでした。5年生で優勝することができたので、やっと辞めることができます(笑)

―みなさん同じ学年で、同じ学科の方もいらっしゃいますが、1年生の頃から交流はあったんですか。

橋本:杉森くんは中学校からの同級生でしたし、安達とは寮で同部屋だったので交流はありました。

両國:僕は3人とは違う学科だったので、入部してから知り合いました。

杉森:1年生の頃は仲悪かったよね?

両國:悪かった(笑)

―どのタイミングで仲が改善されたんですか。

杉森:自分たちが2年生のときに4年生のチームに入った時期があるのですが、4年生の偉大な先輩がとても雰囲気を良くしてくださる方でした。コミュニケーション力に関しては、その先輩から教えていただいたと思っています。その方を中心として、どんどん仲良くなりましたね。

―今回の競技課題「Great High Gate」が4月16日に発表され、旋回のアイデアが生まれるまで、どのような経緯を辿ったのでしょうか。

杉森:競技課題が発表されてから1週間くらい全員でアイデアを出し合ったのですが、その段階では旋回の案はなく、ボックスをどのように積み上げるかのアイデアを出していました。

ボックスを積み上げる案を検討しているときの1コマ
▲ボックスを積み上げる案を検討しているときの1コマ

杉森:そして、6月下旬頃に急に誰かがぐるぐる旋回するアイデアを思いつきました。そのときはそこまで賛成派のメンバーはいませんでしたが、去年のロボットの足回りを使って実験したところ「意外とイケそう」となりましたね。

ボックスの積み上げ形式を採用しているチーム同士で勝負する場合、過半数のボックス、つまり4.2m積んだら勝ちになります。実際、全国大会でも4.2mを目標としているチームは多かったと思います。ただ、実験していく中で、旋回の方がリスクは少ないし、4.2m積まれても勝てそうな見込みが出てきました。そして、本設計に入る直前の7月10日に旋回のアイデアを採用したんです。

自信のある旋回ができるようになるまで

―あの滑らかで正確な旋回を実現するために、どのような工夫や練習をされたのですか。

安達:電気的な部分で工夫した点として、タイヤの速度の調整が挙げられます。旋回する際は左右の固定キャスターの速度差によって曲がり幅が変わるのですが、操縦者である杉森くんがコントローラのスティックでその幅を調整できるよう、回転中もタイヤを無理やり滑らせて正しい軌道に復帰できる工夫を施しました。

旋回するロボットを製作しているときの1コマ
▲旋回するロボットを製作しているときの1コマ

―操縦者が大きく関与する旋回システムなんですね。

安達:そうですね、周回軌道がズレる位置やタイミングは状況によってバラバラで、うまく特性がつかめなかったので、操縦者の杉森くんと僕でゲートの柱とロボットとの間隔を確認し、目を合わせながら、その場で細かく修正していました。

杉森:操縦も含め、実戦練習はめちゃくちゃ気合が入っていました。予め点数を定めた仮想敵を相手に5試合するのを1セットとして練習していましたね。5試合を1セットにしたのは、全国大会で5連勝したら優勝になるからです。試合前のマシン調整の時間や、調整エリアの狭さなど、本番環境を忠実に再現して練習試合を行い、多いときは1日で4セットしていました。

学内での練習の様子
▲学内での練習の様子

―橋本さんは搭乗者として、どのような工夫をされましたか。

橋本:搭乗中は重心を旋回の中心にうまく寄せる必要があり、どういう乗り方が良いのか、みんなで話し合いながら練習しました。また、試合では赤ゾーンと青ゾーンのどちらかで競技することになり、ゾーンによって自分の体の向きが変わるので、重心の位置を間違えないように乗ることにも注意しました。

実際に搭乗しながらロボットのプログラムを開発している様子
▲実際に搭乗しながらロボットのプログラムを開発している様子

―重量を抑えるためにダイエットもされたとのことですが、どれくらい体重を落としたのでしょうか。

橋本:おそらく4月の53kgがピークで、全国大会当日は46kgだったので、7kg痩せました。ロボコンに時間を割いている以上、運動する時間はとれないので、「糖質と炭水化物は少なめにする」「朝食を多めに食べ、夕食を少なめにする」など、食事の方を工夫しました。

杉森:部室にお菓子の差し入れが届くことがあるのですが、朔之進(さくのしん)だけは食べるの禁止でしたね(笑)

―両國さんは設計面でどのような工夫をされましたか。

両國:安定してロボットが動くように、ロボット本体の設計を頑張りました。ロボットって動いて当たり前なのですが、いつでも同じ動きをさせるのはかなり難しいんです。高専ロボコンでもロボットのどこかしらが壊れてしまうチームは必ず出ますし、壊れたらこれまでの5年間の努力が無駄になってしまうので、絶対に壊れないように設計しました。

部品設計の様子
▲部品設計の様子

橋本:ロボットを頑丈にするために後からいろいろ付け足すこともできますが、最初の段階からシンプルで構造力学的に安定したロボットを両國は設計してくれたと思います。

両國:去年のロボットも自分が設計したのですが、毎試合どこかが壊れてしまいまして……。その安定性の無さが原因で、全国大会の準決勝で敗れたと思っています。高専ロボコンは昔から「機構的に強いロボット」よりも「安定性のあるロボット」の方が勝つと言われているので、毎試合必ず安定して動くロボットを目指して設計しました。

―全国大会ではとても安定した旋回を披露されていましたが、いつ頃に精度の高い旋回ができるようになったと考えていますか。

杉森:全国大会の1週間前あたりだと思います。北海道地区大会のときは、まだ安定して旋回できるレベルではなかったです。

そもそも、地区大会のときは予め占有ボックスエリアでつくったゲートをうまく運ぶことができない試合もありました。ですので、少しでもリスクを回避するために、全国大会ではゲートの高さを30cm低くして2.1mにしました。

―旋回の精度が上がったのはなぜでしょうか。

杉森:「座面を低くしたこと」と「旋回時の固定キャスターの数を4個から8個に増やしたこと」が大きく挙げられます。重心が低くなり、各キャスターの負荷が減ったことから、誰もが安心して見ていられる旋回ができるようになり、全国大会直前の練習では10回連続で成功していました。

完成した旭川高専「天旋」のロボット
▲完成した旭川高専「天旋」のロボット

ロボットに自信があるからこそ、人間のミスが許されない緊張感

―全国大会に臨む直前の気持ちはいかがでしたか。

杉森:あまり緊張しないタイプなのですが、5年分のみんなの思いを考えると手が震えました。ただ、どのチームよりも練習している自信があったので、試合に入ったら震えを止めて、必死に操縦していました。

両國:僕はピットクルーでしたので競技フィールドには入れませんでしたが、ロボットにしてやれることはすべてしたと思っていたので、3人を信じていました。

1回戦の会場へ移動中の様子
▲1回戦の会場へ移動中の様子

―決勝戦以外で印象に残っている試合はありますか。

安達:準々決勝の奈良高専との試合です。初めて現地へ見に行った高専ロボコンが2022年でして、そのとき優勝したのが奈良高専「三笠」でした。競技は「ロボットが自作の紙飛行機を飛ばし、さまざまなオブジェクトに乗せて点数を競う」ものでして、奈良高専の紙飛行機は本当に正確に飛んでいました。そんな制御・回路含めてすべてが強い奈良高専に尊敬と憧れを抱いたんです。その奈良高専に勝つことができたのが本当に嬉しく、自信になりました。

両國:僕は大会中ではなく、前日の2回目のテストランが印象的でした。1回目は旋回せずにボックスを運ぶだけだったのですが、2回目で旋回もしたところ550点というテストランでの最高得点を獲得し、周りのチームからの視線が変わったんです。

正直、旭川高専は毎年のように全国大会に出場していますが、そんなに強いロボットはつくれてこなかったと思っています。しかし、今回のテストランによって強豪校のみなさんが視察に来ている様子を見て、強豪校に仲間入りできたかもしれないと初めて実感しました。

熊本高専熊本キャンパスとの2回戦直前の様子
▲熊本高専熊本キャンパスとの2回戦直前の様子

―強豪校に対して次々と勝利し、決勝戦では2回戦と同じ相手である熊本高専熊本キャンパスと戦いました。熊本キャンパスは今大会最高の4.2mのゲートを完成させましたが、旋回による得点加算がわずかに上回り、旭川高専が見事優勝。そのときの気持ちを教えてください。

杉森:試合が終わった瞬間に膝をついてしまいました。負けたと思ったんです。自分の中でカウントしていた点数では負けていました。でも、安達が駆け寄ってきて「勝ったよ!」と言われ、「えっ! 勝ったの⁉」となりました。どうやら旋回数を間違ってカウントしていたみたいです。

▲熊本高専熊本キャンパス「強奪名星(ロブスター)」との決勝戦の様子(5:56:20からスタート)。試合が終了した6:04:33あたりで杉森さんが膝をついています

橋本:旋回を始めたのが早かったので序盤は勝ちそうだなと思っていたのですが、終盤にちらっと熊本キャンパスのゲートを見ると「あれ? 高くね?」と思い、そのまま試合が終了したので、終わった瞬間は勝ったかどうかわかりませんでした。

ロボットから降りていいのかもわからず、副審の方に確認をとって降り、ロボットの電源をせわしなく切っていたらパーン!と金銀のテープが飛んできまして。「なんだなんだ」と思って副審の方に「僕、勝ちましたか?」と尋ねたら「勝ったよ」とうなずいてくださり、それでようやく勝利を理解しました。

決勝戦での旋回の様子
▲決勝戦での旋回の様子(奥:杉森さん、左:安達さん、搭乗:橋本さん)

安達:2人とも試合が終わった瞬間はそんな感じだったので、競技フィールドのメンバーで喜んでいるのは僕だけでした。「あれ、オレ合ってんのかな?」と、混乱していましたね。

両國:試合に勝った瞬間、ピットクルーのメンバーは喜んでいたんですけど、競技フィールドにいるメンバー一同が崩れ始めて、「本当に喜んでいいの?」と困惑しました。そしたら安達が喜び始めたので、駆け寄って抱き合いました。

―改めて、優勝をしっかり受け入れた後の気持ちを教えてください。

杉森:ロボットそのものの性能には自信があったので、残る問題はヒューマンエラーでした。ヒューマンエラーのレパートリーは無限にあり、練習で起こったのと同じエラーが出ることもあれば、今まで起こったことがないエラーが出ることもあります。そのようなまったく安心できる環境ではない中で、ベストパフォーマンスを出して勝ち切れたことへの安堵がありました。

あと、旭川高専の試合模様が結構SNSでもバズっていたようで、特に朔之進は司会の方がよく名前を実況していたこともあり、多くの方に覚えていただきました。学校の方も友達も「おめでとう」と言ってくれましたし、みんなの前で自分たちが活躍する姿をお見せできたんだなと、とても嬉しかったですね。

橋本:目立つことは得意ではないので、名前が知れわたることは恥ずかしかったですが、チームが勝てたので良かったです。

おそらく自分の就職先の方も今回のロボコンをご覧になっていると思います。多少なりとも期待されると思いますので、その分頑張りたいです。

閉会式後の1コマ
▲閉会式後の1コマ(左:橋本さん、中央:安達さん、右:杉森さん)

―5年間のロボコン活動を通して、どういった学びがありましたか。

杉森:技術力が圧倒的についたのはもちろんですが、それよりも人を思いやることや、チーム活動はどうあるべきかを学べたと思います。自分一人では何もできないことをまず自覚し、それを踏まえた上で、話し合う/相談する/お願いするというプロセスを踏むことが大切です。その過程で一番大事なのは「人を尊敬すること」。それを学びました。

安達:チームで方針を立てて取り組むことは企業でも行うことなので、それを先取りして経験できたことが良かったです。また、技術力が全然ない状態で高専に入学し、ロボコンでコツコツ頑張った結果、5年生で優勝することができたので、一番身についたのは自信かと思います。

橋本:チームの運営方針の策定はリーダーが、設計は両國が、電気的な部分は安達がと、みんながすごく頑張っていて、自分はそこに参加させてもらっている感じでした。ですので、やはり第一はみんなへの感謝です。練習や開発でも感謝を大事にして取り組んできましたので。

両國:僕はロボコン優勝を目標に取り組んできたので、それを達成できたことが大事なのですが、一番気づかされたのは「優勝する過程で出会った友達や経験の方が大事である」ということでした。

―最後に、高専ロボコンに興味を持っている後輩のみなさんにメッセージをお願いします。

両國:ロボコンでは、どれだけ本番の会場でメンバーの気合が入っていても、ロボットが弱ければ絶対に勝てません。日々の積み重ねがほぼそのまま勝利につながるんです。そこに魅力を感じる人は、ぜひロボコンに取り組んでいただきたいです。

橋本:ものづくりに興味を持って高専に入学する方が多いと思いますが、ロボコンはとても実践的に学べる環境です。知識や技術がとても身につきますし、優勝を目指してみんなと協力しながら取り組める環境でもあります。勉強になる部分がたくさんあるので、自ら進んで頑張って取り組んでほしいです。

安達:ロボコンを本気でやろうと思ったら、おそらく楽しいことよりも辛いことの方が多くなると思いますし、学生生活におけるロボコンの比重はどうしても大きくなります。しかし、ここで身につけた技術や経験は15~20歳では通常得られないものだと思いますので、そこに魅力を感じるストイックな方は、ぜひ高専ロボコンに取り組むことをおススメします。

杉森:ロボコンは全員がすごく熱量を持って本気で取り組んでいるので、軽い気持ちで入部したがために辞めてしまうケースも結構あります。でも、間違いなく5年間必死に頑張って優勝だけを目指して進んでいけば、次世代を担うエンジニアになれると思うので、ぜひ何かを成し遂げたいという熱い気持ちがある方は、高専のロボコン部に入部して、優勝を目指して頑張ってほしいです。

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