光や放射線環境における物質の変化を調査し、地球や惑星の環境について理解を深めることを目指す、神戸大学大学院 人間発達環境学研究科の谷篤史先生。谷研究室に所属する院生と、卒業した元研究室生もゲストに迎え、研究内容や環境についてインタビューしました。
研究テーマはみんなバラバラ?! 分野横断型の研究室
-谷先生の研究分野について教えてください。
谷先生:学生のころは鉱物に自然放射線が照射されることにより生成する「欠陥」を測定し、鉱物がどのくらい古いか、いつどのくらいの熱を受けたかということを研究していました。この分野は「熱年代学」と呼ばれています。
測定データから科学的に年代を推測することができるようになり、地質や地理、人類学、考古学などの分野での調査に応用されています。現在は研究対象を氷やガスハイドレートへ広げ、そこに生成する欠陥を測定するだけでなく、衛星や惑星といった氷天体の進化についても研究しています。
「メタンガス」ってご存じですか?天然ガスの主な成分で、社会の授業でも資源の問題で扱われていると思います。そのメタンガスを含むガスハイドレート(天然ガスハイドレート) は天然資源のひとつで、日本近海の海底下にも眠っています。
「冥王星にはなぜ海があるのか」など、氷天体の研究は特におもしろいですね。「エウロパ」という衛星や冥王星には氷の地殻の下に海があることは明らかになりましたが、太陽系の中で表面に水があるのは、今は地球だけ。こうしたヒミツを探るために、ラボの中で地球外を模擬した実験をしています。ガスハイドレートが大きな役割を果たしているかもしれません。
―所属する学生は、どんな研究をしていますか?
谷先生:みんないろんな研究をしているから、ジャンルがわかりづらいんですよね。私の所属する人間発達環境学研究科自然環境論コースには10数名の教員が在籍していて、さまざまな専門の先生方がそろっています。学生は「環境」に興味がある人が多いですね。それにおしゃべりな人が多い から、研究室間の壁がすさまじく低いのが特色です(笑)。
嶋田さん:そうですね。研究室の中だけみても、例えば僕は水が専門だけど、横山さんは石。他にも大気圧プラズマやってる院生がいたり。僕はハイドレートに電圧をかけて、どんな状態になるかモニタリングしています。身近なものだと、体脂肪計にも応用される技術です。
多様な個性が混ざり合い、化学反応が起こる
―横山さん・嶋田さんは、なぜ谷先生の研究室へ?
横山さん:私は高専出身ではなく、普通高校の文系出身なんです。大学で理系に転換して、谷先生の研究室にたどり着きました。
嶋田さん:私は物質化学が専門です。和歌山高専在学中に、ハイドレートについて勉強するために向かった修行先が谷先生の研究室でした。その時は1週間泊まり込みで、谷先生からたくさんのことを教えていただきました。
神戸大学大学院は、個性的で親しみやすい学生が多く、谷先生は話しやすくておちゃめな人(笑)。「これはおもしろい研究室やな!」と思って、その後も交流が続きました。大学院進学の際、他の研究室もいくつか検討しましたが、谷先生と学生たちの人柄が決め手でここを選びました。
谷先生:ここは一般的な大学の理系学部(大学院)みたいな雰囲気ではないよね。研究室間の壁は低いし、ここに入れば、大学院から入ってもキャンパスライフが存分に楽しめる(笑)。
嶋田さん:そうなんですよ! 僕にとっては、自分を育ててもらった場所なので、高専生にもぜひこの研究室のことを知ってもらいたいんです。理系の研究室には「情報がない」「人との接点が少ない」「交流が限定的」といったイメージがありますが、谷研究室はまったく違っています。
研究室内で議論したり小さな分科会が生まれたりして、この中で化学反応が起こるのがまたおもしろいんですよ。ここにいなければ、今の研究はこれほど進まなかったと思います。
高専生は「純粋培養」?
―大学院は高専とは全然違うんでしょうか?
嶋田さん:男子学生が大半を占め、飲み会もサークルも恋愛も知らない高専生は、ある意味特殊な人種と言えるかもしれません(笑)。他の環境を知らない「純粋培養」の高専生にとって、大学は本当に多様で刺激的なんです。また、文系理系のどちらかに偏るわけではなく、どちらもいるのが人間発達環境学研究科の特長です。
なかでも谷研究室での出会いは、すべてが新鮮でした。いろいろな人がいて、高専にないものがいっぱいある。知的好奇心や吸収欲求が刺激され、目が回るような毎日でした。
別の研究室に遊びに行くこともよくありました。宇宙や生物、社会などいろんな話題がいつも飛び交っていますね。お互いの話をして知見を深めたり、意見交換したりできたことは、今進めている研究にも大きなプラスになっています。
横山さん:「純粋培養」って(笑)。
谷先生:うまいこと言うなぁ。たしかに、高専だけでなく、理系の研究室も「タコつぼ」のように視野が狭くなりがちです。研究室 の学生たちには、周りも見える人になって社会に飛び立ってほしいと、いつも考えています。
―横山さんから見た高専出身者の印象は?
横山さん:高専出身者はとにかくヤバすぎます(笑)。ヤバいっていうのは褒め言葉で、知識や熱量の話です。高専時代に研究の基礎ができていて、専門分野の研究に注ぐ情熱がすごい。嶋田さんはその代表格で、学部の同年代にはいない存在です。
嶋田さん:ありがとうございます。僕は大学院では、失われた青春を取り戻している感じです(笑)。そのほか大きく感じるのは、先生との距離でしょうか。大学では3年生まで一般講義が中心で、専門分野を学ぶゼミは4年生からです。高専の場合は、ずっとゼミのような感じなのでもっと身近に感じていましたね。谷研究室は高専に近い距離感です(笑)。
谷先生:私たちの研究室に限らず、学生とわちゃわちゃするのが好きな先生が多いんだよね。院生が勝手に他の研究室に遊びに行ったりして行方不明、なんてことも普通やもんなぁ。
一人ひとりの個性を引き出す、谷先生の包容力
―お二人から見た谷先生はどんな存在ですか?
嶋田さん:谷先生は優しいし面倒見がいい先生。頭の回転が速く、あらゆるプランを想定して話してくださいます。相手を否定しないし、少年のような好奇心で一緒に楽しんでくださるのがうれしいですね。一言で表すと「尾木ママ」のような存在です!
谷先生:尾木ママか(笑)。
横山さん:嶋田くんみたいにおもしろいこと言えないですけど、私からも一言。谷先生は知識と人脈の宝庫なんです。話すたびに違う人物が出てきて、私たちの知らない世界をたくさん教えてくださいますね。
―最後に、谷先生から高専生へのメッセージをお願いします。
谷先生:高専生に限らず、何を基準に進学先を選ぶかが重要だと考えています。「議論で見識を深めたい」とか「好きなことを探したい」とか、人によっていろんな目的があるから。私たちの研究室は、3年次 編入でも大学院 入学でもどちらもウェルカム。3年次編入だと一般の授業もある程度履修しなきゃいけないから、研究に没頭したいなら大学院から入学するのがいいと思います。
見学や質問はいつでも受け付けています。今はZoomも一般的になったし、自然環境論コースの他の研究室もコンタクトすればきっと喜んでくれるはずです。
私たちの研究室は、いろんな人が集まる場所。どんな研究をしてもオーケーだから「将来進む道に迷っている人はとりあえず来たらええんちゃうの?」ってくらい、気軽に門を叩いてもらえばいいですよ。
大切にしているのは、「自分から動ける人間になってほしい」ということ。いろんな人と議論できるようになれば、自然と人間的に大きくなれるし、どこでも活躍していけるようになる。研究室での経験を糧に、自分で自分をドライブできる人になってほしいと願っています。
2021年11月1日(月)に高専生向けオンライン進学セミナーを開催しました。 進学セミナー 神戸大学編
【谷研究室】
神戸大学大学院 人間発達環境学研究科 谷研究室
〒657-8501 兵庫県神戸市灘区鶴甲3-11 鶴甲第2キャンパス
TEL:078-803-7905(代表)
メール:tani@carp.kobe-u.ac.jp
自然環境論コース http://neweb.h.kobe-u.ac.jp
人間発達環境学研究科 https://www.h.kobe-u.ac.jp/ja
国際人間科学部 http://www.fgh.kobe-u.ac.jp/ja
【入試 問合せ先】
メール:edu-info@h.kobe-u.ac.jp(教務学生係)
電話:078-803-7920,078-803-7924(教務学生係)
大学院入試に関する情報 http://www.h.kobe-u.ac.jp/ja/admission_master
3年次編入に関する情報 http://www.fgh.kobe-u.ac.jp/ja/admissions
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