インタビュー

「母校以外考えられない」。香川高専歴14年目の田辺先生が語る、母校で働く意義とは

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香川高専本科卒業後、一般企業を経て、母校の技術職員として舞い戻ってきた田辺絵理奈先生。そのきっかけは、「同級生からの一言だった」とのこと。学生として5年、社会人として9年を香川高専で過ごしておられる田辺先生に、高専の魅力を伺いました。

高専へ進学は、早く専門的なことを学びたかったため

-香川高専に進学を決めたきっかけは?

片膝を立てて座るお父さんの足元で体育座りをしている田辺先生。その手前には立派な白と水色の飛行機
機体の制作は父が担当

子供の頃から、父が趣味で作っていた模型飛行機で遊ぶことが大好きでした。工具をさわりたかったんですけど、「危ないから」っていつも止められて(笑)。完成した飛行機を車に積み込み,父と毎週飛行場に出かけて練習していました。

その頃から「機械をもっとさわりたい!」と思うようになりました。当時の夢は航空機の整備士でしたね。父が高専出身だったこともあり、「工業系なら高専に」とオススメされていました。早く専門的なことを学びたかったので、進路を決めるときは高専一択でしたね。

-高専での生活はいかがでしたか?

血気盛んな高専生が群がるなか、一人しゃがんで賞状を手にピースサインの田辺先生
体育祭にて

機械工学科の女子が私1人だけで他にいなかったので、最初は驚きました。金属を削ったり、溶接をしたり、製図の授業を受けたり、実習を体験したことがなかったので、やっぱり楽しかったですね。正直、勉強にはあまり力を入れていなくて(笑)。授業のあと友達とラーメンを食べに行ったり、テスト期間中に教え合いをしたり、学生時代の思い出は授業よりも友達との方が多いですね。

卒業研究では、模型飛行機のエンジンの研究をしました。実は、模型飛行機のエンジンは自動車のエンジンとは違った燃焼方式なんです。このシステムを自動車に転用できれば、低燃費や有害物質の発生を抑えられるというメリットがあります。実現するために、まず模型用のエンジンを使用して、どんな燃焼をしているのか解析をしました。模型飛行機は好きだったので、とても楽しかったですね。

-部活では野球部のマネージャーをされていたんですね。

野球場での集合写真。球児たちと混じって、千羽鶴を持ってピースサインの田辺先生
第44回全国高専大会(熊本県)

もともと野球を観るのが好きだったこともあり、野球部のマネージャーを5年間続けました。ドリンクの作成、ボール拾い、練習時間の管理、記録員や大会の運営など、やることは多かったですね。平日の授業終わりと土日は朝から晩まで、高校野球と変わらないスケジュールで打ち込みました。

実は3年生の時、最後の夏の県大会で、本校初のベスト4に入ることができました。勝った瞬間に監督が振り返って、ぐっと握手をしてくれて。本当に感動しましたし、今でも鮮明に覚えていますね。

「同級生からの一声」が、人生を大きく変えた

-田辺先生はどういったご経緯で、母校で働くようになったのですか。

小学生に寄り添って、ものづくりを教えている田辺先生。とても優しそうな笑顔
卒業生として ものづくり教室のお手伝い

本科卒業後に一般企業に就職したんですが、ちょっとイメージとは違ったんです。転職を考えていた時に、専攻科の同級生から「非常勤の技術職員の募集があるよ」って声をかけられて。「非常勤でもいいからやってみたい」と思いました。

高専の技術職員は、学生が安全に充実した実験・実習が行えるよう教員と連携し、学生の技術習得を支援する職務を担います。技術職員になって、最初は建設環境工学科でコンクリートの実験や環境測定を3年生中心に教えました。人に教える経験が初めてだったので、かみ砕いて教えることが本当に難しくて。「自分が勉強しないと教えられないんだな」と痛感しましたね。

1年半ほどたった頃、試験を受けて常勤になりました。試験前、同僚がいろいろとサポートしてくれたので、本当に感謝しかないです。プレッシャーは大きかったのですが、「母校で働き続けたい!」という強い想いで挑戦しました。合格をもらった時は本当にホッとしました。

-常勤になってから変化はありましたか?

オンライン授業で、手元を映している。棒に糸を付けて魚釣りができるように
香川高専ものづくり教室2020(オンライン開催)の様子

常勤になってすぐは、電気情報工学科で実験を担当したのですが、学年によって教え方を変えることを意識しました。低学年は基礎が中心となり、「分からない」と言いづらいこともあるので、声掛けはしっかりと行います。逆に高学年になると、「自分で考える癖」を付けられるような方向性で、授業を進めていました。

今は機械工学科を担当していますが、旋盤実習などは危険を伴うので、事故を起こさないようにしっかりサポートしています。1コマ授業を行うのにも、説明資料を作成したり、加工材料を準備したり、機械のメンテナンスを行ったり。学生の時には見えなかった部分もたくさん経験しています。

シンプルですけど、「説明が分かりやすかった」と言われたときは嬉しいですね(笑)。まだ機械工学科を担当して日が浅いので、今後は他の工作機械も含め、一通り教えられるようになりたいですね。学生の質問に対してより的確に回答できるように、技術も磨いていきたいです。

学生が成長しているのを見ると本当にやりがいを感じます。実は高専時代から数えると、もう14年目になるんです。「自分が高専に入学した年に生まれた学生」がもうすぐ入学してくると思うと、感動しますよね(笑)。やっぱり母校に愛着がありますし、これからも続けていきたいと思います。

「びっくりさせたい!」キャンセル待ち続出の公開講座

-田辺先生は公開講座も担当されているのですね。

教壇にたち、説明する田辺先生。
作業着を着て、真剣な眼差し
香川高専ものづくり教室。「コンクリート」をテーマに講座を開講

技術教育支援室で、地域の子どもたちを対象に「香川高専ものづくり教室」を毎年開催しています。私は「Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(ものづくり)、Arts(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)」の頭文字をとって、「STEAM(スティーム)教材」と呼ばれる工作教材・体験教材の開発をしています。ひとつの分野のみで学ぶのではなく、教科を横断して学べる教材のことですね。

昨年は「サーモクロミック塗料」という、温度で色が変わる塗料を使った「魚釣りゲーム」を開発しました。魚に色を塗ったり、水の中とお湯の中で色の変化を楽しんだり、釣った魚の点数を計算したりして、遊びの中に学びを取り入れています。

イラストで描かれた動物たち。魚釣りゲームで使用する
温度で色が変わる魚釣りゲーム(魚は常温で左の状態,磁石で釣り上げ湯に入れると右のように点数が見えるようになる)

「なんで!?」というリアクションがあると嬉しいですね(笑)。とにかく、子どもたちをびっくりさせたいんです。科学に興味を持ってほしいですし、目を引くものをこれからも作っていきたいと思っています。

ありがたいことにキャンセル待ちが出るほど好評をいただいています。教育現場での実用化に向けて、小学校の先生にアドバイスをいただきながら、より一層良いものができるように考えを巡らせています。

-高専を目指す中学生にメッセージをお願いします。

3名の女性研究者。一番左で賞状を持ち笑顔の田辺先生
サイエンスアゴラ2016にて。エネルギー変換を学ぶスロットカー教材がJST賞を受賞

工業系の仕事を目指す人にとっては、早い段階から専門的な知識を学べるので本当にオススメです。やっぱり勉強が好きな学生を見ていると、授業の内容を「面白いものを見ている目」で見ているんです。

学生には「勉強することの楽しさ、学ぶことの楽しさ」を味わってほしいと思います。大人になって勉強しようと思ったら、時間もお金も掛かりますし、「学ぶこと自体」を楽しんで、日々の学校生活を過ごしてもらえたら嬉しいですね!

田辺 絵理奈
Erina Tanabe

  • 香川高等専門学校 技術教育支援センター 高松キャンパス技術教育支援室・技術職員

2011年 香川高等専門学校 機械工学科卒業。
一般企業を経て、2012年より現職。

田辺 絵理奈氏の写真

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