自動車、航空・宇宙、FA・ロボティクス、エレクトロニクス分野における総合エンジニアリング企業「株式会社タマディック」。1959年に設立されたタマディックは、トップメーカーと提携し、幅広い設計・開発・生産技術に携わる技術パートナーとして成長してきました。
本記事では、大島商船高専の電子機械工学科の卒業生で、現在はタマディックのFA・ロボットテクノロジー事業部で活躍されているHinaki H.さん(入社2年目 ※取材当時)と、Hinakiさんの高専生時代の部活の顧問である北風裕教先生(情報工学科長 教授)に、プロコン(プログラミングコンテスト)やDCON等で数々の賞を受賞してきたHinakiさんの高専生時代や、タマディックに就職した理由、業務内容などについて伺いました。
絵を描きたくてコンピュータ部へ
―Hinakiさんが大島商船高専に入学した経緯を教えてください。
Hinaki:小学生の頃からものづくりが好きで、発明クラブにも入っていました。ものづくりの専門的な技術が学べる学校に行きたいと思っており、母と話しながら「大島商船高専に入ろう」と決めていましたね。動くものをつくることが好きだったので、電子機械工学科に入学しました。

―オープンキャンパスにも参加し、コンピュータ部に訪問したそうですね。
Hinaki:はい。訪問したら、高価な液晶ペンタブレット(液タブ)が何台もあり、「こんな環境で絵が描けるんだ」と、その時点で入部を決めました。北風先生と初めてお会いしたのは、そのタイミングでしたね。
北風:そうですね。「ちょっと絵を描いてみて」とリクエストしたら、ささっと上手に描いてくれたんですよ。「これは即戦力だ」と、すぐに思いました。何を描いてもらったのかは覚えていないのですが、覚えてます?
Hinaki:何かの表紙を描いた気がするんですけど、細かくは覚えていないです……(笑)

―Hinakiさんはもともと絵を描いていたんですか。
Hinaki:小学3年生のときに母からペンタブレット(板タブ)を買ってもらって、それからずっとデジタルで描いています。ものづくりにも通じるのですが、形やデザインを考えることが好きで、絵もその延長線上にありました。
―高専に入学してみて、ギャップはありましたか。
Hinaki:全然ギャップはなかったです。高専では1年生のときから実験・実習でロボットをつくったり、実験の記録を取ったりするので、「こういう結果になるんだ」と、体で分かります。座学が苦手だった私にとって、とても良い環境でした。
―入学前から入部を決めていたコンピュータ部では、主にどのような活動をされていましたか。
Hinaki:低学年の頃は主に、毎年3月に中国地区の高専生が集まって開催されているコンピュータフェスティバルのメディアコンテンツ部門で、イラストやアニメーション作品を出していました。
北風:Hinakiさんは1年生のときから連続して賞を取り続けていました。1年生・2年生・3年生・5年生のときは1位、4年生のときは2位でしたね。「Hinakiさんに勝つぞ」と、他高専の学生から目標とされる存在だったと思います。

プロコンやDCONで最優秀賞を受賞! 就職を決めた経緯
―Hinakiさんは2021年の高専プロコンにも参加し、自由部門で文部科学大臣賞(最優秀賞)を受賞しています。プロコンへの参加は、どのような経緯だったのでしょうか。
Hinaki:3年生のときに北風先生に呼び出されたんです(笑) 他のメンバーはすでに決まっていて、「プロコンに出ませんか」とお誘いいただいたのがきっかけでした。
北風:コンピュータ部では毎年チームを組んでプロコンに参加しているのですが、「プログラミングができる学生3名」「アイデア出しやプレゼンが得意な学生1名」「絵を描いて説明できる学生1名」の計5名でチームを組むことを心がけていました。
Hinakiさんの力はすでにコンピュータフェスティバル等の実績から見ても十分でしたし、先輩である4,5年生メンバーからのご指名もありましたので、「絵を描いて説明できる学生1名」としてHinakiさんを抜擢したんです。
―プロコンに関わることで、苦労したことはありましたか。
Hinaki:コンピュータフェスティバルでは私一人で全部つくっていたのですが、プロコンではチームでつくります。そのため、コミュニケーションやチームワークの難しさに直面しました。チームメンバーに報告するとき、「これは言っていいのかな」と戸惑うことが多く、自分の意見がうまく言えなくて、最初はすごく大変でした。
北風:コンピュータ部はもともとおとなしい学生が集まりやすい傾向にありました。しかし、15年ほど前に「コミュニケーションが少ない状態だと勝てない」という意識が部内で生まれ、歴代の先輩たちが話し合いの場をつくる仕組みを少しずつ育ててきたんです。
Hinaki:先輩方にコミュニケーションの場を設けていただいたおかげで、徐々に自分の意見を言いやすい環境になっていきました。また、そのおかげもあって、みんなが頑張っているから自分も頑張ろうと、チームワークを高めていけたと思います。後輩が増えてきてからは、各後輩によって対応を変える順応力も自然とついてきました。

北風:5年生になった頃には、もう私が教えることはほとんどなくなっていましたね。本当に成長したなと思いました。
Hinaki:北風先生からはたくさんのことを吸収しました。私含め、チームメンバーはおしりに火がつかないと動けない人ばかりでしたので、タスク管理やスケジュール進行については特に学びが多かったです。思っている以上に早めに動かないと勝てないことを学びました。
北風:特にHinakiさんのチームはみなさん優秀でしたので、不十分なタスク管理・スケジュール進行によってもったいない結果になってしまうのは避けたかったんです。そのため、厳しく言っていたところはあります(笑)
―就職先としてタマディックを選んだのはなぜですか。
Hinaki:4年生のときにインターンシップに参加したのがきっかけです。6軸のロボットアームをチームで制作・制御する内容で、「これだけ充実したインターンシップができる会社はすごい」と感じました。また、先輩社員の方がドライビングシミュレータを楽しそうに見せてくださり、「自分で考えて設計・制作できるのが魅力的だな」と感じました。

Hinaki:さらに、ワークライフバランスの良さも、タマディックを選んだ理由の1つです。コアタイムなしのフレックスタイム制で、プライベートを大切にした働き方ができる点が良いと思いました。また、歩数コースやボディメイクコース※など、社員の健康増進のための施策「健康チャレンジ!」にも力を入れていて、そのような会社の姿勢も安心感につながりましたね。
※歩数コースでは、8カ月間の月平均で目標歩数をクリアした場合に祝金1万円が支給される(1カ月未達の場合は半額)。ボディメイクコースでは、体重100g=100円、または腹囲1cm=1,000円と設定し、昨年の健康診断データからマイナスになった分が祝金として支給される。
北風:自分で働くペースを調整できる職場を選んでくれたのは、本当に良かったと思っています。Hinakiさんは頑張り屋さんで、とことんやってしまうタイプなんです。プロコンでもDCONでも「いつ寝ているんだろう」と心配してしまうくらい取り組んでいましたから。
Hinaki:北風先生がそこを把握してくださっていたことに、ちょっと感動しています(笑)
―Hinakiさんはプロコンのほかにも、令和3年度起業家甲子園で総務大臣賞(最優秀賞)、DCON2023で最優秀賞を受賞しています。起業などの選択肢は考えませんでしたか。
Hinaki:考えませんでした。明確に「これを自分でやりたい!」という思いがなかったんです。あくまで私はメンバーが考えたアイデアや思考をイラストなどで形にすることに取り組んでいましたので。「起業したら良いのに」と思う先輩はたくさんいましたね(笑)

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入社2年目でチームを動かす存在に
―新入社員研修では、チームでものをつくる機会があったそうですね。
Hinaki:はい。「コンピュータ部に入っていなかったら、絶対うまく動けていなかったな」と感じました。報告の仕方や、意見の伝え方の部分で、コンピュータ部で苦労しながら身につけたコミュニケーション能力が、社会人1年目からしっかり役立っていると実感しました。
―現在の仕事について教えてください。
Hinaki:入社1年目の7月から、半導体製造工場内で稼働する天井走行式無人搬送車(OHT)のレールレイアウト設計などを担当しました。レイアウトを考える人、天井からの吊り方を考える人、人の動線を考える人など、チームで分業しながら進める仕事で、チーム間の意思疎通がとても重要になります。
2年目の7月からは、半導体の素材であるウェハを入れる保管容器(FOUP)を運ぶクレーン設計を担当することになりました。現在は主体的にチームを動かし、仕事をメンバーに振り分けながら業務にあたっています。

―入社2年目でチームを動かす立場になっているんですね。
Hinaki:レールレイアウト設計のときは指示される立場だったので、クレーン設計を担当することになった当初はギャップがありました。でも、今の方がより達成感やモチベーションが高いと感じています。
北風:高専の仕組み・カリキュラムをうまく使いながら順調に成長されたこともあって、タマディックですごく活躍されていますね。もともと苦手だったコミュニケーション能力を上手く乗り越え、周りに仕事を振れるようにまでなっているとは、正直うまくいきすぎているくらいだと思います(笑) タマディックさんには、若い社員さんも活躍できる環境があるんだなと感じました。
―2025年11月に大島商船高専で開催されたキャリア教育フォーラムで卒業後初めて対面で再会したそうですが、Hinakiさんの変化は感じられましたか。
北風:すごく感じました。高専生のときは「何を話すか」「どうやって話すか」を頭で考えながら話していた印象でしたが、フォーラムでは積極的に学生とスラスラ話していましたね。
Hinaki:話しかけることへのハードルは、かなり下がったと思います。あと、昔は人からどう見られているのかを気にしていましたが、今は優しい社員のみなさんに囲まれ、評価もしてくださるので、積極的に発言することができています。

―職場の雰囲気が良いんですね。
Hinaki:そうですね。いつもわいわいしているわけではありませんが、いざというときには仕事やプライベートのことについて相談していますし、一緒に考えてくださる風土です。70人ほどの同期がいたのも心強かったですね。
入社当初は事務所がある名古屋で一人暮らしできるか不安でしたが、その必要は全然ありませんでした。今では学生に名古屋を勧めているくらいです。

※撮影:平井広行

―今後の目標は何ですか。
Hinaki:さまざまな場面で「この人に聞こう」と思ってもらえる“マルチスキルエンジニア”になりたいです。タマディックには、私が在籍している「FA・ロボティクス」の分野以外にも「自動車」や「航空・宇宙」の分野があり、各分野の中にもさまざまな技術領域があります。今はまずクレーン設計を極めつつ、そのほかの領域にも詳しくなりたいですね。
ちなみに、タマディックは配属の希望が通りやすい会社です。プロコンで「キクラゲの一括収穫型システム」という、FAと深く関係している取組にチャレンジして以降、私はFAの“近未来性”に興味を持ち、FA・ロボットテクノロジー事業部への配属を希望しました。
北風:ぜひ、いつまでも謙虚さを忘れずに、臆することなくチャレンジを続けてほしいですね。あと、実は今でも大島商船高専ではキクラゲの一括収穫型システムの研究を続けていて、ロボットアームで収穫する部分の開発を進めているところです。その分野でも、いつかまた一緒に何かできたらいいなと思っています(笑)

―最後に、就職を考えている現役の高専生へメッセージをお願いします。
Hinaki:最初は自分が知らない場所で働くハードルがすごく高かったですが、飛び込んでみたら全然大丈夫でした。ですので、チャンスがあるなら、不安があってもいったん飛び込んでみることをおすすめします。
環境が変わることへの不安は、誰しもあると思います。私も最初はネガティブに考えていました。でも、「なんとかしよう」と頑張ることができました。だから、環境が変わることを恐れすぎなくて大丈夫です。なんとかなるよと伝えたいですね。
◇
○タマディック 高専生向けHP「高専OB・OGが描くミライ設計図」
https://tamadic-recruit.com/kosen/
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