弓削商船高専の情報工学科2年生の平松 夏々翔(ななと)さん。工作が好きすぎて自宅に3Dプリンターを導入し、SNSアカウントで毎日の工作の様子を発信されています。平松さんが工作にハマったきっかけとは。そして、現役高専生のリアルな生活とは。お話を伺いました。
生活の「不便」を、工作で解決したい
―平松さんが弓削商船高専に進学されたきっかけを教えてください。
もともと父が弓削商船高専の商船学科に通っていて、父から教えてもらいました。進路としては2択で考えていて、広島県の家から一番近い高校に行くか、弓削に行って自分の好きなことをするかで迷っていましたね。
また、中学1年生の頃からプログラミングを始めていまして、中学2年生でプログラミングコンテストに応募したことがあります。亀育成サポート機という作品を独学でつくり、1次審査と2次審査を通ったことがとても嬉しかったんです。それが後押しになり、弓削商船高専の情報工学科に進学しました。
亀育成サポート機に関しては、弓削商船高専の合格発表後に最終審査があり、グランプリをいただきました。
―実際に進学されてみて、いかがでしたか。
授業の最初の方ではワードやエクセルなどの基本的なことから学びます。「最初からプログラミングをやるのかな」と思っていたのでイメージと違いましたが、知らなかった機能などもあり、勉強になりました。
今一番楽しいのは、最近始まったプログラミング言語のPythonの授業です。授業ごとに三つのプログラミングの問題が出て、近くの席の友達と相談しながら解決していくのが楽しいです。
-自宅でも工作を続けていらっしゃるのですね。
部活はロボット研究部に入りましたが、入学してから数回しか行っていないんです(笑) というのも、広島県から愛媛県まで毎日通っているので、通学時間が往復で1時間半ぐらいかかり、家に着くのが遅くなると工作の時間が削られるので、今は家での時間を優先的に確保しています。
一人で工作する時間が大好きで、生活の中で「ここが不便だな」とか「こんなものがあったら便利だな」という思いやアイデアを実際に形にできることが工作の一番の魅力ですね。
-平松さんは「第2回全国高等学校プログラミング大会」で、賞を取られているんですね!
「All IoT化システム」で高等学校部門の優秀賞をいただきました! All IoT化システムとは、Siriと連動して、スマホで家電を操作できるシステムです。赤外線信号でテレビの電源を入れることができる機能や、「IoT火災報知機」や「IoT温湿度計」など、様々な機能を付けました。
このシステムは、「Wake On LAN」を使い、離れた部屋からパソコンを起動するなど、スマホひとつで一連の動作が完結する仕組みでつくっています。家にはたくさんの家電のリモコンがあるので、「スマホひとつで全ての家電を操作できたら便利だな」と思ったのがきっかけです。
All IoT化システムという、アプリで家電を操作できるシステムをつくる技術は当時の僕にはなかったので、一から勉強してつくるのが難しかったですね。All IoT化システム自体がサーバーになっていて、サーバーの勉強も独学だったので、一つの問題を解決するのに1週間かかることもありました。
学校でその分野に詳しい先生に聞くこともできたのですが、「自分の力で解決したい」という気持ちが強かったです。参考書やインターネットで情報を集めながら、4ヶ月ほどで完成しました。
All IoT化システムは、インターネットに接続している人なら誰でも操作ができます。アプリの登録やログインも必要なく、QRコードを読み取るだけで使うことができるところにこだわりました。
「第2回全国高等学校プログラミング大会」を目標にこのシステムをつくったので、賞をいただけて本当に嬉しかったです! 次回の大会も応募予定なので、自分の力がどこまで通用するか試してみたいと思います。
工作が好きすぎて、自宅に「3Dプリンター」を導入
―平松さんはXのアカウント、“高校生の電子工作日記”にて、たくさんの作品をアップされていますね!
はい、趣味の工作をSNSに投稿していたことがきっかけで、取材していただいたこともあります。アカウント名が「高校生」なのは、つくった当時は高専に通っている学生を「高専生」と呼ぶことを知らず、それを知ったときはすでに“高校生の電子工作日記”として浸透していたので、変えないままにしようと思ったからです。
高校生の電子工作日記でアップした作品のひとつは「時刻をペンで書く時計」で、高専1年生の時に制作しました。これは僕がアイデアを出したわけではなくて、海外の方がプログラムと3Dデータをつくられていて、それを印刷して組み立てて、プログラムの微調整をしたんです。
一番大変だったのは、ペンとホワイトボードとの距離の微調節で、最初はペンで書いた数字が読めるのがやっとという崩れ方だったんです。トライアンドエラーで何回も数値を変えて、微調整を重ねて綺麗に書けるようにし、3日ほどで完成させることができました。
―最近はどのような工作をされているのですか。
お年玉やお小遣いを貯めて、自宅に3Dプリンターを導入しましたので、最近はその3Dプリンターを使って、リコーダーをつくりました。一応、音も鳴るんですよ!
工作するときは、印刷にかかる時間が「10時間ぐらいで終わるもの」を目安としてつくっています。材料費は数円で済むので、設定さえ終われば完成を待つだけのものが多いです。
最近はタッチパネルのディスプレイの制御の勉強をしています。次回のコンテストにタッチパネルのディスプレイを搭載しようと思っていて、表示も綺麗になりますし、ボタンもたくさん増やすことができるんですよ。
“高校生の電子工作日記”の日常について
―平松さんの普段の学校生活について教えてください。
朝は6時半ぐらいに起きて、1時間ぐらいで準備をして、バイクに乗って40分ぐらいかけて登校します。授業は8時50分から1コマ目が始まって、90分間あります。10分休憩が終わったあと、2コマ目が始まって、お昼休憩になります。
お昼休憩は1時間20分あるので、学食で友達とご飯を食べて、教室で話しています。学食のカツカレーが一番好きで、300円とお手頃なんですよ。味もすごく美味しいです!
13時20分から3コマ目、15時から4コマ目になりますが、授業数は曜日によって変わります。例えば、月曜は2コマで終わるんですが、金曜日は3コマでして、毎日4コマあるというわけではないんです。
授業終わりは、家に帰ってご飯とお風呂を済ませたら、工作をしています。平日は2~3時間、休日は5時間ほど工作に充てています。寝るのは23時から23時半の間が多いです。テスト前は工作の時間がテスト勉強時間になりますね。
―先生方との関わりはいかがですか。
物理の牧山隆洋先生(総合教育科 准教授)と一番仲が良くて、僕が3Dプリンターを購入した話をしたら、牧山先生も高専に3Dプリンターを導入してくださったんです。僕は牧山先生に3Dプリンターの使い方を教えていて、牧山先生は僕に物理を教えてくださっています。
牧山先生とは「教材のコンテストを一緒に応募しよう」と話しているのですが、やっぱり先生の知識はすごいんですよ。週2回、牧山先生と放課後の時間を使って物理の教材をたくさんつくっていて、そのまとめサイトが出来ればいいなと思っています。
自分の知識を増やす時間にもなっていますし、かなりスキルアップにも繋がっているので、完成が楽しみです。
―平松さんが思う、高専の魅力を教えてください。
高専は環境もすごく整っていますし、「自分のやりたいことを最大限の効率でできる場所」だと思います。自分が少しでもやりたいと思ったら、ためらわずに挑戦することが大事です。
僕は分からないことがあったらインターネットで調べるんですけど、毎回すぐに結果が出るわけではなくて、いろんなサイトを参考にして原因を特定するんです。でも、高専には詳しい先生がいて、聞いたらすぐに教えてくれるので、効率が良くなりますよね。いつでもすぐに聞ける体制があるのは、すごく安心できます。
また、弓削商船高専の図書館には「シアタールーム」が併設されていて、最近は映画『君の名は。』を見ました。見たい映画があれば、図書館に入れてくれるところも嬉しいですね。
―最後に、平松さんの今後の目標を教えてください。
テストではクラスで1位を取りたいですね! あとはプログラミングの知識や経験をもっと深めたいなと思います。それには勉強時間を増やすのが一番大事かなと思っていて、テスト前の勉強時間を増やしていく予定です。
また、僕が使っている言語は「C++」なのですが、授業では「Python」を使用しているので、その使い分けができるようになりたいですね。
将来的には、世の中を便利にする家電のプログラムを書いて、実際にいろんな人に使ってもらいたいです。例えば、大変なお風呂掃除を自動でしてくれるロボットのプログラムをつくってみたいです。そのために、高専での残りの生活もしっかり学んで、プログラミングや工作のスキルアップに繋げていきたいです!
平松 夏々翔氏
Nanato Hiramatsu
- 弓削商船高等専門学校 情報工学科 2年
2023年4月 弓削商船高等専門学校 情報工学科 入学
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