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【現地レポート】「起業・就職・キャリア形成」で陥りがちな落とし穴 〜豊橋技術科学大学「本音ぶっちゃけ座談会」〜

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9月19日(金)、豊橋駅前にある豊鉄ビル9Fにて、豊橋技術科学大学 スタートアップ推進室が主催の「第3回 本音ぶっちゃけ座談会」が開催され、高専生(re-KOSEN参加者含む)・大学生たちと産業界のパネリスト・参加者たちが、起業やキャリア形成に関する率直な議論を展開しました。そこで浮き彫りになったのは、安易な起業志向などといった、学生が陥りがちな問題でした。その内容について迫ります。

アイデアピッチが示した「正しいプロセス」

まず行われたのは、豊橋技術科学大学大学院 博士前期課程2年生の浅田吉博さんによる「甘い大豆」のアイデアピッチでした。浅田さんは「糖尿病患者のために甘いものを」という想いから、血糖値の低減や腸内フローラの改善に効果的と言われている大豆に注目。生育環境をコントロールすることで、血糖値を上げずに甘みを感じられる大豆の開発を目指しています。

浅田さんによるアイデアピッチの様子
▲浅田さんによるアイデアピッチの様子

しかし、このアイデアは「糖尿病患者の困りごと」から生まれたアイデアではなく、食料自給率の問題から出発したものでした。

現在の日本では非常に多くの食料の自給率を上げようという動きが進んでいますが、自給率が下がると本当に困る食料は何なのかと疑問に思った浅田さん。自給率が低い小麦や果物は代替品があるためすぐに困る状況にはならないが、大豆は「世界的な供給不足」「重要なタンパク源」「醤油や味噌など、日本の食文化を支える食料」である観点から、危機的な状況に陥りやすく、ないと非常に困る食料であると浅田さんは考えました。

そして、大豆の自給率を上げるためのアイデアを考えるにあたって、浅田さんの親族にいらっしゃった糖尿病患者の方を思い出し、せっかくなら品質にもこだわろうと、「甘い大豆」に至ったのです。「大豆を安定的に生産する」→「大豆の品質を向上させる」という順番で浅田さんは考えていたことが分かります。

アイデアピッチでの、参加学生との質疑応答の様子
▲アイデアピッチでの、参加学生との質疑応答の様子

この事例について、土谷徹先生(スタートアップ推進室長)は「アイデアを出す前のプロセスが最も重要」と強調していました。「簡単に見つけられた課題は、すでに誰かが取り組んでいる。自分で課題を構造化することが大事」という指摘もあり、表面的な課題に飛びつくことによるアイデアの脆弱化をお話ししていました。

起業への厳しい現実や誤った認識

続いて行われたパネルディスカッション1では、「起業か?就職か?この時代に必要なキャリア形成とは?」をテーマとして、さまざまな意見が交わされました。そこでフォーカスされたのが「起業のタイミング」。「学生時代に起業する」と「就職してから起業する」ではどのようなメリット・デメリットがあるのかが話し合われました。

まず「学生時代に起業する」について。メリットとして「失敗するリスクが取れる」「体力があるうちに挑戦できる」「試行回数を増やせる」などが挙げられましたが、「学生が取れるリスクはそこまでない」や「信用がないため、例えば資金調達に苦労する」、そして「礼儀やマナー、仕事の進め方が分かっていない」といったデメリット・反対意見も出ました。

一方、「就職してから起業する」の場合のメリットとしては「学生時代よりもネットワーク(人脈)を生かせる」「これまでの就労経験・実績から信用を得ることができる」などが挙げられました。また一方で、「若くなくても挑戦できる」といった声もありました。

パネルディスカッション1での、学生とパネラーとの質疑応答の様子
▲パネルディスカッション1での、学生とパネラーとの質疑応答の様子

この議論を踏まえると、「社会から信用を得る」ことが起業を成功させるキーワードの1つに見えます。まだそこまで信用を得ていない学生にとっては「社会から信頼を得ているメンバーをチームに入れること」が効果的な対策の1つですが、そのようなメンバーをチームに入れるためには、そのメンバーに信頼されないといけません。まず「信頼を得る」ために何をすればよいのかを考えないといけないのです。

また、テーマから少し派生して、「起業はあくまで手段であり、起業が目的化してはいけないこと」も話題に挙がりました。企業内の申請・稟議などを通して資金を調達するのは、銀行やVCから資金を調達するよりも簡単であるといった声もあり、「企業内の新規事業として行う」「副業として行う」などといった広い視野を持ってほしいという意見もありました。

浅田さんもパネルディスカッションに参加
▲浅田さんもパネルディスカッションに参加

さらに、「若い頃からの起業の是非」について討論する際によく挙がる「失敗しても、経験を積めるから良い」という言葉への反論もありました。その言葉によって、目的意識や戦略をしっかり考えず、「失敗しても良い」という意識だけで行動しているケースが多々見受けられるそうです。失敗しないように考えて行動するからこそ良い経験につながると、土谷先生は話されていました。

産業界が求める真の人材像

パネルディスカッション2では「産業界が求める人材とは? 学生時代に経験すべきこと」をテーマとした具体的な議論が展開されました。「本音ぶっちゃけ座談会」の名にふさわしく、産業界が求める人材についてさまざまな意見が出ていましたが、その中で共通して挙げられたのは以下の要素でした。

チームワークの本質理解
単なる「仲良し」ではなく、目的達成のための建設的な対立も辞さない真のチームワーク。「他者を否定しないだけでは、チームワークとは言えない。ノーサイドの精神で、正しい言葉遣いで、ダメなものはダメと言わないと物事が進まない」という参加者からの指摘もあった。

素直さと適応力
「素直でない人」はなかなか活躍できない。自分の知識やスキルに固執せず、新しい環境での学び直しを受け入れる姿勢が重要。それが自身のキャリア形成にもつながる。

好奇心:
モノづくりが好きという気持ちが、仕事に取り組むにあたってのエネルギー源になる。だからこそ、自分で情報を取りに行くことができ、スキルも向上する。

自走力と前向き思考
挑戦意欲があり、自分が実現したいことを達成するために足りていない部分を補う努力をしている人が活躍している。それに関連して、「勝手に育つ人」の重要性をパネリストが指摘。「育ててください」という受動的な姿勢では活躍できないとのこと。

パネルディスカッション2で、学生からの質問に回答する企業の方
▲パネルディスカッション2で、学生からの質問に回答する企業の方

今回の座談会を通して目立っていた意見は、起業の機運や表面的なスキルアップに踊らされることなく、現実と真正面から向き合うことの重要性でした。

パネルディスカッション2の冒頭で、新卒で入った会社で定年まで働くのではなく、「常に学び、常に成長していこうとする姿勢」「就職と起業、就職と副業のように、複数の選択肢を持つ」という、新しいタイプの“安定志向”が生まれているという話が、参加している企業の方からありました。一つの道に固執するのではなく、様々な可能性を見据えながら、着実に実力をつけていく。そのための第一歩は、現実を正しく認識することから始まるのかもしれません。

安易な起業志向や楽観的なキャリア観に警鐘を鳴らした今回の座談会。その厳しくも現実的な“本音”の議論は、参加した高専生や大学生にとって貴重な指針になったかもしれません。

○イベント情報
【第3回 本音ぶっちゃけ座談会】
日時:2025年9月19日(金)13:00~18:00
場所:豊鉄ビル9F 展望会議室
主催:豊橋技術科学大学 スタートアップ推進室

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JR東日本のパートナー会社として、交通インフラを支える鉄道関連工事のリーディングカンパニー。高専出身の中堅・新卒社員に聞く、高専生が選ぶ東鉄工業という道とは