アマゾンジャパンのメンテナンステクニシャンで、マネージャーを務めている小久保大河さんは都立産技高専の卒業生です。高専に進学したきっかけやアマゾンジャパンに入社した経緯、入社8年目となる現在までのキャリアステップや仕事内容、Amazonの良いところなどをお伺いしました。
1年生から意識していた「Amazon」という存在
―都立産技高専に進学された経緯を教えてください。
もともと小学生や中学生の頃から、図工や技術といった授業を楽しいと感じていました。頭の中のイメージを目に見えるプロダクトとして自分の手でつくれるという、ダイレクトに自分の考えを現実のモノにできる感覚に魅せられていたんです。
そして、中学3年生のときに進学先で迷っていたところ、祖父から勧められたのが都立産技高専でした。実家の近くにありましたので、夏休みに開催されていた科学技術教室に2回ほど参加し、ライントレーサーなどのロボットをつくってみたらすごく楽しくて、生産システム工学科への進学を決めました。高い就職率や進学率も、決め手の一つでしたね。
―生産システム工学科ではどういった勉強をされていたのですか。
3DCADを使った設計やCAM、CAE解析といった製品開発の技術だけでなく、品質・工程・納期管理といった生産現場で必要とされる技術も学びました。入学前の高専に対するイメージは「手を動かす」が強かったのですが、実際はシミュレーションなどで細かい計算が必要な場面も多く、苦労しながら付いていきましたね。卒業研究では、数値流体力学(CFD)の分野に取り組んでいました。
―アマゾンジャパンに入社されたきっかけを教えてください。
最初のきっかけは、1年生の頃に高専の就職支援室の壁にあった就職実績の貼り紙です。その中にAmazonの名前があったことから興味を持ち始めました。今から10年以上前のことではありますが、当時から「有名な大企業」というイメージがあり、経営基盤が安定していることや、だからこそ安心して大きなチャレンジができる環境が魅力的に映りました。
そして、4年生の就活時期になった際、「高専生のための仕事研究セミナー」(主催:メディア総研株式会社)でAmazonのブースを訪れました。リクルーターの方から業務内容や最新設備、特にAmazon Robotics(該当の商品を棚ごと作業者のもとへ届けるロボット)の説明を受けて、非常に興味が湧きましたね。

※Fulfillment Center(フルフィルメントセンター)、物流拠点
その後、日本最大級の規模である小田原FCの見学会にも参加しました。非常に大規模な設備をたくさん目にして、「これを実際に触って改善作業が行えるのは、絶対楽しいだろうな」と思い、応募を決めました。
マネージャーになって変わった意識
―入社から現在までのキャリアを教えてください。
入社後は小田原FCに5年間在籍しました。始めは先輩方についてメンテナンスの基礎を勉強。その後、ちょっとずつ自分の担当設備を持つようになり、改善業務に当たるようになりました。ゼロから学んでいく状態でしたので最初の1~2年は勉強の日々でしたが、自分の考えたアイデアを先輩方やマネージャーが受け入れてくださって、実際に改善に着手させていただけたときは、楽しさを感じましたね。
その後の2023年には、千葉みなとFCのローンチメンバーとして異動。新しい設備がベンダー様へ要求している仕様に即しているかを、専門部署の方と一緒に現場を回って確認するなどの業務に携わりました。異動後も引き続き改善業務は行っていまして、実際に千葉みなとFCの稼働が始まってからはマネージャー代行などの経験を積ませていただき、2024年にマネージャーに昇進しました。
現在は8人のチームのマネジメントと、日々の出荷オペレーションにおける設備サイドでの責任者を務めています。

―マネージャーになると業務内容にも変化があったと思いますが、仕事への考え方は変わりましたか。
これまでは自分の成長を考えながらタスクを行ってきましたが、チームメンバーがついてからは、そのメンバーが成長するにはどういったタスクを任せた方が良いのかや、自分はどれだけのサポートをすれば良いのかを考えるようになりました。自分よりもメンバーの成長をベースとして考えるようになったのが、大きく変わった点です。
―ご自身が最も成長したと感じる点はどこですか。
設備が稼働している以上、どこかしらで故障やトラブルは発生しますので、初動段階でどういった原因かを予測する発想力が大きく成長したと思います。トラブルの原因は多種多様でして、未だに経験したことのないトラブルに当たることは多いです。
夏場や年末年始などといった物量が多い繁忙期でしか発生しないトラブルに直面することもあります。現場に張り付いて広く深く観察し、試行錯誤しながら改善につなげ、生産性に大きく寄与できたときは、かなりのやりがいを感じました。

―高専で学んだことは、Amazonでの仕事でどのように役立ちましたか。
学ぶ過程で得た基礎知識やツールの使い方が、設備メンテナンスやトラブル対応に役立っています。また、レポートの作成で培った文章を書く経験が、毎年の目標管理シート(MBO)の作成など、ドキュメントをつくるときに役立つことが多かったです。学科問わず、高専での学びや研究の過程で得たさまざまな経験が役立つ環境が、Amazonにはあります。
行動指針から見えるAmazonの風土
―職場のサポート体制について教えてください。
マネージャーとの1on1が月に一度あり、不安な点や疑問点を解消する場が設けられています。また、入社して3カ月間は先輩社員がメンターとして付き、1,2週間に1度の1on1で相談できる環境が整っています。私も高専卒の新入社員のメンターを担当したことがあり、技術的な面はもちろんのこと、慣れないシフト勤務での休みの過ごし方などをアドバイスしてきました。
ちなみに、弊社の勤務形態は夜勤(23:00~8:00)・遅番(14:30~23:30)・早番(6:00~15:00)の3交代制で、体を慣らしやすいようにシフトを組んでいるのが特徴です。3勤2休、4勤2休などで(3日夜勤、2日休暇、4日遅番、2日休暇など)平日休みも取れるので、プライベートも充実して働くことができています。
定時内で業務をクリアすることが評価にも繋がるため、月の残業時間も少なく、働く環境としては魅力的だと感じます。また拠点内は空調が効いており、業務中も過ごしやすく、そういった面でも働きやすいですね。


―小久保さんが仕事をする上で大切にしていることを教えてください。
AmazonのFC全体における出荷・入荷オペレーションでは「従業員の安全」を大前提にしています。家族のもとへ笑顔で帰れるよう、FCで働く方たちが怪我をしない仕組み・構造をつくりあげることを一番大切に考えています。
―Amazonで働くにあたって、良いところは何だと思いますか。
Amazonには16項目からなる行動指針「Leadership Principles(LP)」があり、全員がリーダーとして、LPに従いながら仕事に取り組める点が良いところです。部下を持っていないメンバーも「自分たちがリーダーである」という意識を持ちながら日々の仕事に取り組む土壌が育まれています。
また、「It’s still Day One(毎日が始まりの日)」のチャレンジ精神を持ち続けるカルチャーがAmazonには浸透していて、日々成長し続けられる環境である点も挙げられます。設備についての勉強はとどまるところがありません。LPが定める行動指針の1つ「Learn and Be Curious(常に学び、好奇心を持ち続けること)」の姿勢で日々の業務に取り掛かることで、間違いなく大きく成長できると思います。

―今後の目標を教えてください。
これまではマネージャーになることを目標にしていたので、マネージャー1年目である現在は長期的な視点での目標は持っていません。まずは、部下や組織のメンバーが成長できるよう、マネージャーに求められている資質、例えばメンバーとの接し方や関係各所などとの連携などを習得していきたいです。
―最後に、現役の高専生へメッセージをお願いします。
日々レポートや課題・実験で大変だと思いますが、高専で苦労した経験は社会に出たら必ず役に立ちます。高専での経験に感謝して、同級生と笑い合えるような良い思い出になるはずです。
「It’s still Day One」——高専に入学したときの思いを忘れずに日々勉強していくことで、社会で活躍できる人になっていけると思います。めげずに頑張って、学生時代を楽しんでください。
小久保 大河氏
Taiga Kokubo
- アマゾンジャパン合同会社 RME Site Mainte Area Manager

2018年3月 東京都立産業技術高等専門学校 生産システム工学科 卒業
2018年4月 アマゾンジャパン合同会社 入社
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