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早大理工が高専生のための編入学制度を開始! 「2年次編入」を導入した早稲田大学ならではの理由と、そのメリット

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早大理工が高専生のための編入学制度を開始! 「2年次編入」を導入した早稲田大学ならではの理由と、そのメリットのサムネイル画像

2023年1月16日、早稲田大学が理工系の3学部(基幹理工学部・創造理工学部・先進理工学部)において、全国の高専生を対象とした新たな編入学制度(指定校推薦)を2024年度から導入することを発表しました。本記事では、その経緯などについて、石山敦士先生と渡邊亮先生(ともに先進理工学部 電気・情報生命工学科 教授)にお伺いしています。

早大理工には「多様性」がなかった?

―今回の編入学制度(指定校推薦)を導入することになった理由を教えてください。

渡邊先生:そもそも早稲田大学は、1882年に大隈重信によって建学された際に、「学問の独⽴」「学問の活⽤」「模範国⺠の造就」を教旨(教育理念)としました。

大隈重信の銅像に、スズメがとまっている様子
▲早稲田大学内にある、大隈重信の銅像

渡邊先生:「模範国民」には、日本という枠組みだけでなく、地域という狭い枠組みや、アジアという広い枠組み含め、そのような場所でリーダー的な役割を果たしてほしいという意味が込められています。そのため、「全国、およびアジアから多様な学生を集める」ことを初めから重要視していました。

石山先生:今も早稲田大学全体に占める留学生数は非常に多く、日本の私立大学で1番多い人数(3,967人)です(全体の1位は東京大学(4,084人)で、2位が早稲田大学。2021年度 外国人留学生在籍状況調査結果(日本学生支援機構)より)。また、「外国人学生」という括りですと、2021年には6,579人が在籍していました。

モニターのついた機械を指す学生の皆さま
▲早大理工での学びの様子

―そのような話を聞くと、さまざまな背景を持った学生が集まっているように見えます。

渡邊先生:しかし、理工系に限ると、「多様な学生を集める」という点では不十分だったんです。これまでもAO入試など、さまざまな入試方法を揃えていましたが、結果的には高校の理系コースの卒業者がほぼ100%でした。

また、地方出身者(関東圏以外の学生)の割合も低下しているんです。早大理工において20年ほど前だとおよそ半分だったのが、今は25%を切っています。

近代的な建物の外観
▲早稲田大学51号館の外観。理工系が集まる西早稲田キャンパスの中心にあります

石山先生:地方出身者の低下傾向は、早稲田大学だけではなく、首都圏にあるすべての大学が持つ課題でもあると思います。

渡邊先生:そこで、多様性を確保するためにも、「高専生の編入学」について検討するようになったんです。

まず、他大学を調べてみると、国立大学の工学部に高専生が毎年約750人(豊橋技科大・長岡技科大を除く)編入学しており、学年定員の3~4%を受け入れていることが分かりました。これにより、早大理工が、いかに高専生に対して積極的なアプローチをしてこなかったのかも分かったんです。

―高専については様々な調査をされたそうですが、他にはどのような調査をされましたか。

渡邊先生:ほぼすべての高専で、高専生がどの企業に就職し、どの大学に編入学したのかを直近3年間で調べ、それをまとめて分析しました。

渡邊先生
▲取材をお引き受けいただいた渡邊先生

石山先生:それを見て私が驚いたのは、全国の高専生が全国の国公立大学へ編入学している点でした。つまり、「地元にこだわっているわけではない」ということです。

あと、関東圏で括ると、結構な編入学者数になりました。このデータを見て、早大理工でも高専生を受け入れる環境をしっかり整えれば、編入学してもらえるのではないかと考えたんです。

石山先生
▲取材をお引き受けいただいた石山先生

渡邊先生:今回の調査で進学や就職の実績を見たことで、高専生のポテンシャルの高さも改めて感じました。ですので、早大理工の研究リソースのもと、さらに成長して社会に出てほしいと考えるようになり、2021年12月に理工系全体でワーキンググループをつくるに至ります。そこで様々な議論を行ったうえで、今回の編入学制度ができた次第です。

早大理工だからこその「2年次編入」

―それでは、その編入学制度の中身を教えてください。

渡邊先生:私たちは「多様な学生を受け入れて大切に育てる」、そして「高専との強い信頼関係を構築する」という理念を据えた結果、編入学制度として「指定校推薦」という方式を取りました。推薦基準は、早大理工で学んでいくための基礎学力の担保として「4年次における学業成績の席次が上位10%以内の者(40名換算で席次が4位以内)」としています。

工業系の学科やコースを持つ全国の高専にはすでに依頼していまして、出願締め切りは5月下旬、人数としては「国立大学と同程度の割合」が目標です。筆記試験はなく、面接だけ課しており、継続的に毎年高専生を受け入れようと考えています。

現状として、高専生の卒業後の進路は、就職や専攻科への進学、国公立大学への編入学がほとんどです。しかし、その中に「早大理工への編入学」という新しい選択肢ができてほしいと考えています。

レバーを操作する学生の皆さま
▲早大理工での学びの様子

―編入学制度をつくるにあたり、苦労した点は何でしょうか。

石山先生:「単位認定」をどうするべきかという議論は、1番時間を要しましたね。

渡邊先生:大学に編入学する学生にとって、単位認定がかなり不安に思っている点であることは調査でも分かっていました。

そこで、単位認定については、入学金や授業料等の支払い前である9月下旬までに「単位認定見込み数」としてお伝えすることにしました。学科によって2年次編入と3年次編入に分かれるのですが、2年次編入ですと最大50単位程度、3年次編入ですと最大70単位程度を目安としています。

ヘルメットと作業着を着て学んでいる学生の皆さま
▲早大理工での学びの様子

石山先生:高専関係者の方々にヒアリングしてみると、「2年次編入は高専生にとってハードルが高いのではないか」といった声もありました。1年留年しているようなものですし、私立大学ですので、学費が高くなることも懸念されたのだと思います。

しかし、学費についてですと、本学では150種類ほどの給付型奨学金をご用意しており、これらの奨学金制度は常に見直しが検討されています。高専生の編入学に関連する奨学金制度に何か動きがあれば、すぐにみなさんへお伝えしたいです。

そして、早大理工でしっかり学んだうえで卒業してほしいという考えも勝り、ほぼすべての高専のカリキュラムを精査し、「本学のカリキュラムとの連続性」を加味した結果、学科によっては2年次編入にしたのです。

ロボットと学生
▲早大理工での学びの様子

―「本学のカリキュラムとの連続性」とは、どういうことでしょうか。

石山先生:早大理工は設立当初から、理学と工学を「車の両輪」と考え、「基礎と応用」を重要視してきました。

例えば、1年生の実験教育だと、数学科の学生でも工学の実験を受けますし、建築科の学生でも化学の実験を受けます。つまり、早大理工では、1年生や2年生のときから「基礎としての専門教育」を行っているのです。

実験室に集まる多くの学生の皆さま
▲理工学基礎実験室の様子

石山先生:また、早大理工は大学院への進学が前提としてあり、実際およそ7割が進学しています。だからこそ、1年生から専門教育をしているという側面もありますね。学科によって内容は多少異なりますが、根本の精神は同じです。

渡邊先生:英語に関しても、技術的な討論や、報告書・論文執筆などで使える英語能力の基礎を養うため、理工系に特化した英語教育をしています。

石山先生:このように、早大理工は1年生から独自の教育を受けていますので、高専生を受け入れる際には、高専でのカリキュラムと照合し、「連続性」を意識しないといけないのです。

都市の模型を作る学生の皆さま
▲早大理工での学びの様子

石山先生:また、その「連続性」をより一層強くするため、英語は入学前の事前教育を検討しており、数学は導入教育として新たに高専生向けの科目を用意することにしました。

もちろん、今回の制度は出来上がったばかりですので、3年から5年間ほど経過観察したのち、編入時期などについて見直すことは充分に考えられます。

早大理工の大きな魅力は「ワイワイしている」こと?

―「2年次編入」は、早大理工で勉強・研究するとなると、学科によっては必要になるのですね。

渡邊先生:「2年次編入はハードルが高い」という声はありましたが、一方、大学に編入学した高専生にヒアリングしてみると、肯定的な方が“それなりに”いることが分かったのも後押しになりました。

理由としては「認定される単位数が厳しい場合があり、卒業までの学業が相当忙しくなるから」や「課外活動との両立がしたいから」などです。コロナ禍以降、人との交流を重要視する学生は多くなり、それが影響しているとも考えられます。

石山先生:早稲田大学のキャンパスは都心部にあり、国際色も豊かですし、サークル数もトップクラスです。もちろん学業が第一ではありますが、多くの仲間たちと一緒に暮らすことで人間として豊かになり、じっくり成長できると思います。

都心の中の近代的なキャンパス
▲西早稲田キャンパスの様子(中央は早稲田大学51号館)。周りの景色を見ると、都心にキャンパスがあることが分かります

渡邊先生:また、文系のキャンパス(早稲田キャンパスや戸山キャンパス)と理工系のキャンパス(西早稲田キャンパス)はかなり近い距離にあります。ですので、キャンパス同士の交流も活発に行われているんです。

私たちの願いとして、「入学した1年生」と「編入学した高専生」が同じような思いを持ち、早大理工という環境で大いに学んでほしいと考えています。今回の編入学制度によって、高専生と早大理工学生のお互いが良い刺激を受けるはずです。早大理工は、受け入れた高専生を大切に育てることをお約束します。

桜と早稲田大学
▲桜の季節の早稲田大学51号館

―それでは最後に、“早大理工そのもの”の魅力を教えていただけますでしょうか。

石山先生:先ほどお話ししましたが、早大理工は大学院への進学率が高いです。研究室にいる期間を学部4年生から修士2年生とすると、自分と同じ学年を含め、上下5つの学年とワイワイしながら研究室での生活を共にすることになります。これはいろいろなことが学べる貴重な体験になると思っています。

他大学の先生に聞くと、「早稲田の学生は時間の使い方がうまい。いつも遊んでいるように見えるけど、いざゼミを開いたら、しっかり勉強しているのが分かる」とおっしゃっていました。密度の濃い時間の中で切磋琢磨できる環境だと思います。

大隈講堂と桜
▲大隈講堂を背景にした桜

渡邊先生:早大理工は、教員1人に対する学生数が国立大学に比べて多いです。ですので「教員と学生の1対1でのコミュニケーション」は劣るかもしれませんが、「研究室として1つにまとまる力」は大きいです。学生が持つ研究室への所属意識は強く、先輩・後輩のコミュニケーションが自然と出来上がっているのが魅力です。先輩はよく後輩のサポートをしていますね。

石山先生:「大学独自の“色”がなくなってきている」と昨今よく言われていますが、私は決してそうは思いません。長い歴史の中で自然に息づいた色が、本学にはあると思います。

新緑の中の大隈重信像
▲新緑の季節のキャンパスと大隈重信像

◎イベント情報
【高等専門学校対象編入学試験(指定校推薦型) 高専生向けオンライン説明会】

開催日時:2023年3月14日(火)13:00~14:00
参加申込:https://bit.ly/3XxyOK8
参加可能人数:上限なし

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