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動くものの振る舞いを数理で読み解く。「システム制御理論」の魅力について

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都城高専の卒業生である藤田健太郎先生は、2022年に同専攻科を卒業され、その2年後となる2024年から母校の教壇に立っています。「まさか自分が教員になるとは」と話す藤田先生。着任までの道のりと、専門とする「システム制御理論」の魅力についてお話を伺いました。

「わからない」が学びの原動力に

—都城高専に入学したきっかけを教えてください。

小学生の頃からものづくりやロボットが好きで、祖父から話を聞いて「高専」の存在を知りました。その当時は漠然と認識していたのですが、中学生になると進学先として考えるようになりました。

実は、中学2年生の頃は、宮崎県内の工業高校への進学も視野に入れていました。しかし、中学3年生の頃、都城高専のオープンキャンパスに参加して、設備や規模の違いに驚愕。高専で学ぶ楽しさや環境の良さを実感し、高専一本で進学する決意が固まりました。

―高専入学後、授業や環境にはすぐ馴染めましたか。

周囲にはレベルの高い学生が多く、授業のレベルは想像通り高かったですね。中学時代はどちらかと言うと成績に自信があったのですが、入学後の最初のテストではクラスの真ん中ほどの順位で、「これまでの感覚では通用しない」と痛感しました。

優秀なクラスメイトに囲まれると焦りも感じましたが、それがかえって勉強への意欲につながり、より真剣に取り組むきっかけになりました。今振り返れば、このときの経験が努力の方向性を定める重要なターニングポイントだった気もしています。

▲高専本科生の頃の藤田先生。体育競技会の応援団演舞の打ち上げにて

―先生が専門とされている「制御工学」との出会いについて教えてください。

本科4年生のときに「制御工学」の分野に出会い、その魅力に引き込まれました。以前から「制御工学」には漠然とした憧れがあったのですが、具体的な内容はほとんど知らない状態でした。

そして、いざ学んでみると、最初は難しくて理解が追い付かないことも……。しかし、「わからない」ということが逆に原動力となり、きちんと理解をして勉強したい気持ちが強まりました。勉強を進めるうちに制御工学の本質が見えてきて、学ぶ楽しさや好奇心がどんどん増していったのが印象的です。その頃から、大学院まで進学して研究をしたいと思うようになっていました。

―卒業研究はどんなテーマで、どのように進められましたか。

私の専門は「システム制御理論」と呼ばれる分野です。簡単に言うと、機械やロボットなどを思い通りに動かす「頭脳」をつくる学問です。現在は、特にそのなかでも、機械やロボットなどのシステムを動かす上での安全性の保証をどのように特徴付けるかについて研究しています。

本科5年生の卒業研究では、宮崎県のきゅうり農家向けの補助器具の開発を行いました。具体的には、収穫のタイミングを判定できるスマートグラスを活用し、初心者でも効率よくきゅうりを収穫できるようにするものでした。

また、専攻科では、専門分野である制御工学に関連した研究に取り組みました。二輪で独立して倒れないように姿勢を維持しながら移動する運搬ロボットの制御を研究。ロボット制御の安定性に関する研究は、現在も継続して行っています。

▲専攻科修了式にて、機械工学科の高橋明宏先生(左)と

―特に印象に残っている授業は何ですか。

一つ挙げるとするなら、やはり卒業研究です。自分から主体的に調べ、試行錯誤しながら取り組む経験は初めてだったので新鮮に感じました。長時間かけて課題に向き合い、成果を出すことの楽しさや達成感を知るきっかけにもなりました。自分で課題を見つけること、解決策を考える過程など、研究の本質的な面白さに触れることができ、今の自分にもつながっています。

―そのほか、高専生時代の思い出はありますか。

高専時代は寮生で、テスト期間中に仲間と協力しながら勉強したことが思い出です。個人の部屋はありますが、共同のスペースが多いので常に誰かがいる環境です。そのにぎやかさに慣れていたので、一人暮らしを始めたときは「静かだな」と感じました(笑) また、研究室や専攻科時代の友人とは現在も交流が続いています。高専生活の長い年月の間に築かれた関係は、社会人になってからも大切な財産となっています。

「システム制御理論」の魅力

―その後の進路について教えてください。

本科生の時、一度大学への3年次編入を考えましたが、金銭的な問題もあり、専攻科に進学することにしました。大学編入と比較すると、高専の専攻科は奨学金や授業料免除制度が整っているので、金銭的な負担をより少なくできると考えたんです。その後、制御についてより理論的な、かつ本質的な内容を追究したいと思うようになり、九州工業大学の大学院に進学しました。

私自身も入学前は知りませんでしたが、高専に入れば、大学への編入や大学院進学など、多様な進路の選択肢があります。こうした点も入学前や在学中の早い段階で意識すれば、将来の学びの幅が広がると思います。

―高専での学びは、大学院進学にどう影響しましたか。

制御工学について、高専の授業で扱う内容はほんの「入口」に過ぎません。授業で扱わない高度な内容は独学で学んでいたので、大学院に進学すればもっと専門的な内容を学べると期待しており、実際にその通りでした。

大学院では、倒立振子と呼ばれる棒のバランスを保つロボットの理論的研究に取り組みました。子どもの頃、手のひらに棒をのせて、倒れないようにバランスを取る遊びをしたことはありませんか。私が研究対象としている倒立振子も、バランス維持の原理はそれと同じです。

棒が倒れる限界を数学的に解析すれば、商品開発の際に安全性を担保することができます。この理論は、自動運転や家電製品など日常生活のあらゆる動くものへの応用が可能で、現代社会には欠かせない仕組みだと言えます。

▲大学院の研究室仲間と一緒に非線形制御理論の勉強をしていたときのホワイトボード

―「システム制御理論」を学ぶ楽しさは、どこにあると思いますか。

システム制御理論は、「動くものの振る舞い」を数理的に理解し、思い通りに動かす方法を探る学問です。ロボットや車、ドローンだけでなく、気候、経済、生物など、世界のあらゆる現象は「システム」として動いています。制御理論の魅力は、それらの異なる分野をつなぐ共通の考え方の本質に迫ることができる点です。

実は制御の考え方はとてもシンプルで、「倒れないように支える」や「速すぎず、遅すぎず動かす」など、直感的な感覚です。面白いのはその直感をどうやって数式で表すかでして、世界の動き方や安定の仕組みが可視化されていくことが大きな魅力です。

専攻科修了から2年後、教員として母校へ

―母校の教員になられたきっかけについてお聞かせください。

高専時代の研究室の指導教員である髙木夏樹先生からのお誘いがきっかけでした。元々は研究者を目指していましたが、断念し、ちょうど就職活動をしていたタイミングです。それでも、「自分に教員が務まるのか」という不安もあり、どうするか1週間ほど悩みました。その後、「これも何かの縁だ」と思い、公募を受けることにしました。

高専在学中は、まさか自分が教壇に立つとは思ってもみませんでしたが、自身の経験や知識を学生に伝えることができるのは、教員ならではの魅力だと感じています。進学や研究の道のりそのものが、私自身の成長に大いにつながっています。そうした経験の大切さや面白さも、私なりの言葉で伝えていきたいと思っています。

ともあれ、卒業後、わずか2年の修士課程を経て母校に戻り、高専教員としての生活をスタートすることになりました。学生時代とは視点が全く異なり、「教えることの難しさ」を実感しながら勉強する日々です。

授業は、3年生向けの「工業力学」を担当しています。高校で学ぶ力学の基礎をベースに、工業系に応用できる形で授業を構成しています。数式だけで説明すると学生が混乱しやすいため、身の回りの事例や図をできるだけ用いて「イメージで理解できる授業」を心がけています。

―母校の環境や雰囲気は変わっていましたか。

新しい寮やコロナ禍で変化した授業体制など、学内の雰囲気が以前とは違っていましたが、学生たちが試行錯誤しながら学ぶ姿勢は以前と変わらず「懐かしい光景」です。その真剣な姿に、毎日刺激を受けています。学生たちが主体的に学ぶ姿を見て、教育者としての責任を感じるとともに、仕事のやりがいも感じています。

▲水泳部の顧問を務められている藤田先生。令和6年度の全国高専大会水泳競技大会にて

―現役高専生や、これから高専を目指す中学生へのメッセージをお願いします。

都城高専の学生は、宮崎県内の至るところや一部県外から来ています。そのため、個性豊かな学生が多い印象を受けます。高専の良いところは、そのような個性をみんなで認め合っているところです。自分の好きなことを見つける、追究するのに最適な環境だと思います。何事も「楽しい」という気持ちが大きな原動力になりますので、自分で「楽しい」「面白い」と思える何かがあるだけで、大きな武器になりますよ。

藤田 健太郎
Kentaro Fujita

  • 都城工業高等専門学校 機械工学科 助教

藤田 健太郎氏の写真

2020年3月 都城工業高等専門学校 機械工学科 卒業
2022年3月 都城工業高等専門学校 専攻科 機械電気工学専攻 修了
2024年3月 九州工業大学大学院 情報工学府 情報創成工学専攻 博士前期課程 修了
2024年4月より現職
2025年4月 九州工業大学大学院 情報工学府 情報創成工学専攻 博士後期課程 入学

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