89(和歌山高専)

ー解決したい地域の課題を教えてください。

和歌山県御坊市では、南海トラフ地震による強い揺れと、最短15分で到達する津波による甚大な被害が想定されている。旧耐震基準の木造住宅が多く、老朽化も進んでいることから、地震発生時には倒壊や屋内閉じ込めのリスクが高い。

また、人口の約40%を高齢者が占めている。昨年の能登半島地震では、旧耐震住宅の倒壊によって多くの高齢者が犠牲となった。御坊市でも同様の被害が起こる可能性が高く、住宅の耐震化や避難空間の確保を早急に進めることが求められている。

ーその課題を解決する、アイデアについて教えてください。

地震発生時に住宅が倒壊する前に安全な避難経路を確保するため、室内設置型の簡易シェルター「BAL-SS(Balloon Safety Shelter)」を提案する。揺れを感知すると自動で風船が展開し、天井の落下や家具の転倒を緩和すると同時に、家具との隙間に避難空間を確保する。エアバッグのように衝撃を吸収し、人を守る構造である。

普段はコンパクトに収納でき、低コストで導入可能なため、高齢者世帯にも適している。——「たった1部屋でも命を守れる空間を」 

「BAL-SS」のイメージ
▲「BAL-SS」のイメージ

ー現在の進捗状況について教えてください。

現在、「BAL-SS」の仕組みや機能について、模型や実験装置を用いた検証を進めている。揺れを感知して自動的に風船が展開するシステムの動作確認を行い、圧力や展開時間、避難空間の確保状況を調査中である。

また、御坊市役所危機管理課との打ち合わせを通じて、地域特有の課題や導入の可能性について意見交換を行っている。さらに、アンケート結果をもとに、地域住民から直接意見を伺う対面ヒアリングも実施予定である。

ー2026年1月24日(土)の最終審査会に向けて、今後の計画を教えてください。

最終審査会に向けて、「地域交流」を最も大切にしながら活動を進めていく。アンケートや対面ヒアリングを通じて、地域住民が感じている不安や課題を丁寧に聞き取り、「BAL-SS」の改良や活用方法に反映させる予定である。

また、地域イベントなどの場を活用し、模型展示や実演を行うことで、住民が直接体験しながら防災への意識を高められる機会をつくりたい。御坊市役所とも連携し、「たった1部屋でも命を守れる空間を」という理念のもと、地域と共に安心して暮らせる仕組みづくりを目指していく。