公益財団法人 日本高専・大学支援財団 2024年度奨学生(高専生)インタビュー

ものづくりへの情熱から、服飾の世界へ! 情熱を形にする高専卒業生の挑戦

取材日
 

有明高専の今村吏希さんは環境生命コースで殺菌ガスに関する研究に取り組んでいます。(公財)日本高専・大学支援財団の奨学金がなければ、今のように幅広い視野を持って進路を選択できなかったと話す今村さんに、高専での取り組みや、服飾系の進路を選択した意気込みについてお伺いしました。

高専で育んだ工学の視点、ファッションへの挑戦

─ものづくりに興味を持ったきっかけは何でしたか。

中学3年生の頃、株式会社クボタが発展途上国でインフラ整備をしているCMを見て、ものづくりを通して社会に貢献する姿に感銘を受けました。そのとき、将来は自分も何かを生み出して社会に役立つ仕事をしたいと強く感じたことが、高専を目指す大きな理由になりました。

当時は工学への興味があったので、大学よりもはやい段階で実践的な知識や技術を学びたいと思っていました。普通高校では一般教科が中心ですが、高専なら1年生から専門的な授業を受けられることが、自分にとって大きな魅力でした。

─高専進学に不安はありませんでしたか。

周りの友人はほとんどが普通高校への進学を選んでいたので、不安は確かにありました。ただ、高専と普通高校の両方を受験していたこともあり、進路の選択肢があったため、心の余裕はあったと思います。

高専では2年生後期のときにコース選択があり、当初は応用化学コースを考えていました。しかし、授業を通して、生き物の構造や働きを深く知りたいという気持ちが強まり、環境生命コースを選択。研究室では化学系を選びましたが、取り組んでいるのは殺菌ガスに関する研究です。インフルエンザウイルスや大腸菌などへの殺菌効果を調べるなど、生物への関心ともつながる研究テーマに取り組んでいます。

宮城県・気仙沼市の湿地へ調査にいったときの今村さん
▲宮城県・気仙沼市の湿地へ調査にいったときの今村さん

─インターンシップの経験について教えてください。

4年生の夏に化学メーカーでインターンシップに参加しました。その化学メーカーはモノマーを重合することでポリマー(ゴム)をつくる会社でしたね。工場の現場では従業員一人ひとりに大きな裁量が与えられており、それぞれの方が責任をもって働かれていたことに感銘を受けました。

─サッカー部や学生会に所属されていたそうですが、どのようなことをされましたか。

サッカー部は1年生から所属し、2年生からは学生会に参加しました。サッカー部は運動不足解消や仲間との交流が目的で始めたので、試合を通してチームワークを深められたことが嬉しい思い出です。

サッカー部で活動中の今村さん
▲サッカー部で活動中の今村さん(青のユニフォーム)

学生会では文化祭の整備班として活動しました。友人と共に学校運営に関わることで、学校生活を支えている実感がありました。

文化祭で女装する今村さん
▲文化祭で女装する今村さん(3年生の頃)

─高専卒業後は服飾の専門学校への進学を予定されています。その理由は何ですか。

高専2年生頃から洋服に興味を持つようになり、3〜4年生の頃にはさらにのめり込んだんです。それまで高専卒業後は脳神経系の勉強をしたいと考えていたのですが、研究や勉強に没頭する中で、自分が本当に情熱を持てるものは何かを改めて考えました。その結果、心の中に常にあったファッションへの想いを形にしたいと思い、服飾の専門学校で学ぶ道を選びました。

具体的には、デザイナー、パタンナーになりたいと考えています。パタンナーは、デザイナーが描いたデザインを実際に服に落とし込む仕事をする人のことです。パタンナーは実際に服作りをする人であり、デザイナーにくらべて表舞台にはあまり出ないことが多いのですが、今はどちらもできたらいいなと考えています。

─ファッションで影響を受けた人物はいますか。

COMME des GARÇONSを立ち上げた、デザイナーの川久保玲さんです。川久保さんは、単に流行のテーマに沿って服をつくるのではなく、服を通してテーマやメッセージを表現していて、そこに強い憧れを抱きます。コレクションを通して自分の考えや価値観を伝える姿勢は、ものづくりを目指す自分に大きな影響を与えました。私も自分だからこそできる服作りで、自己を表現したいと考えていています。

お気に入りの服を着ている今村さん
▲お気に入りの服を着ている今村さん

私は工学系出身だからこそできる服作りがあると考えています。そのひとつがサステナブルファッションです。現在のファッション業界では洋服の廃棄問題が深刻なのですが、工学的な視点を生かして、廃棄物の再利用や環境負荷の少ない素材を用いた服作りに取り組みたいと考えています。まだぼんやりとしたイメージですが、自分なりの視点で新しい価値を生み出したいと思います。

幅広い視野を持つことができた

―今村さんが日本高専・大学支援財団を知ったきっかけは何だったのでしょうか。

学校が公開している奨学金申請の一覧から知りました。在学中は複数の奨学金を利用していまして、日本高専・大学支援財団の奨学金は併給が可能だったのが魅力的でした。

奨学金によって進学や学生生活の選択肢が広がったと思います。私は実家から通学していまして、それに往復4時間ほどかかっていたので、学費、教材費だけでなく通学費用にも活用できたのは大きかったです。

金銭面での不安が軽減したことで、視野が広がり、自分が本当にしたいことは何か、他の選択肢はないのかということを考えられるようになりました。そのおかげで、服飾系の専門学校に進むという進路を選ぶことができたと思います。

─高専では積極的に勉強されており、資格も多く取得されていたそうですね。

日ごろから勉強に熱心に取り組むようにしていたおかげで、2年次は学年1位、3年次には学内成績優秀者賞を取ることができました。また、TOEICの受検や、危険物取扱者、カラーコーディネーター、情報系など、幅広い資格を取得しました。

正直に言うと単位変換を目的に取得した資格もありましたが、多様な分野に触れることで新たな興味が生まれ、視野が広がったと思います。あと単位変換によって、高学年では科目選択に余裕を持って臨むことができました。

また、数学検定や中国語検定も取りました。数学検定は「数学に対して抱いていた興味」を、中国語検定は「英語を勉強することで芽生えた、他の言語に対する興味」を原因にして受検。たとえやりたいことが決まっていて、勉強する必要がないと感じても、教養を深めるために勉強は大切ですし、自分の将来のためにもやっておいて損はないと思います。

─高専5年間を振り返って、どんな学生生活でしたか。

非常に充実していました! 早い段階から専門分野を学べたことは、自分の将来を考える上で大きな糧になりました。勉強だけでなく、部活動や友人とのつながり、研究への挑戦など、多くの経験が自分を成長させてくれました。服飾専門学校の卒業後についてはまだ具体的なイメージを持てていないのですが、研究とファッション両方とも取り組み続けられたらと思って頑張っています。

▲1年生のときの体育祭にて

─最後に、高専進学を考える中学生へ向けてメッセージをお願いします。

高専の魅力は、何よりも早い段階で研究や専門分野に触れられることです。大学生よりも先に実践的な学びを得られるため、自分の興味を深める大きなチャンスがあります。率直に言えば、大学生のキャンパスライフとかそういったものにちょっと憧れがある人は、大学の方がいいかもしれません(笑) とはいえ、ものづくりや研究に少しでも関心があるなら、ぜひ高専への進学を検討してみてください!

○公益財団法人日本高専・大学支援財団 公式サイト
https://jkusf.or.jp

今村 吏希
Riki Imamura

  • 有明工業高等専門学校 創造工学科 環境生命コース 5年

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